サイバー攻撃とは?目的や種類、企業ができる対策を解説

サイバー攻撃とは、インターネットを通じて個人や企業のデバイスへ不正にアクセスし、サービスの妨害や情報の窃取などを行う犯罪行為です。
その手法は年々多様化しており、企業の情報セキュリティ担当者の方は対策に苦労されているのではないでしょうか。
本記事では、サイバー攻撃の概要や現状をご紹介したうえで、その目的、種類、対策、事例などについても解説していきます。企業のサイバー攻撃対策について検討している方は、ぜひ参考にしてください。
サイバー攻撃とは

サイバー攻撃(Cyberattack)とは、サーバー、パソコン、スマートフォンなどの情報端末に対して行われる攻撃の総称です。その多くはインターネットを介して行われます。
サイバー攻撃の目的や手段は多様化しており、特定の企業や個人に対してだけでなく、無差別で行われる場合もあります。攻撃を受けると、金銭の窃盗、個人情報の流出など、深刻な損失を被る可能性があるため、対策が必須です。
とくに近年はAIやスマートフォンの普及により、企業や個人がインターネットに触れる場面が増えていることから、サイバー攻撃に遭うリスクが拡大しています。
サイバー攻撃の現状・動向
警察庁の調査によると、サイバー犯罪の検挙件数は年々増加しています。令和5年におけるサイバー事案の検挙件数は3,003件となっており、なかでも電子計算機使用詐欺が950件と最多です。

引用元:令和5年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(警視庁ホームページ)
さらに、令和5年1月から9月までのクレジットカード不正利用被害額は、同期比で過去最多の401.9億円となり、令和5年のインターネットバンキングに関わる不正送金被害は、発生件数、被害総額共に過去最多の5,578件、約87.3億円でした。
サイバー攻撃が増加している背景としては、IT技術の発達に伴う、スマートフォン、SNS、Wi-Fi、クラウド、ブロードバンド、IoT機器などの普及により、組織や企業の利用するシステム環境が大幅に多様化している状況が挙げられます。
くわえて、新型コロナウイルスの感染拡大によって普及したテレワーク環境を狙ったサイバー攻撃の被害も報告されています。
このように、サイバー攻撃は社会環境の変化により高度化・多様化しており、企業を取り巻く環境の変化によってよりいっそうの対策が求められる状況です。
サイバー攻撃の目的

金銭の搾取
金銭の搾取は、サイバー攻撃の主な目的の一つです。
代表的なのが、ランサムウェアという不正なソフトウェアで、個人情報や機密情報にアクセスする手法です。攻撃者は、盗んだ情報を第三者に売ったり、暗号化して使えなくしたうえで復元の条件として身代金を要求したりという形で、金銭を搾取します。
また、インターネットバンキングなどのログイン情報を盗み、直接的に金銭を引き出すケースもあります。
データの破壊・情報漏洩(えい)など業務妨害
企業の業務を妨害する目的で、内部システムの破壊や情報の改ざん、情報漏洩(えい)などを行うケースもあります。
とくに、企業の機密情報や個人情報といったデータの流出は、会社の信用失墜にもつながり、顧客離れや取引停止を招きかねません。
産業スパイ
産業スパイがサイバー攻撃を行い、競合他社の機密情報を入手することで、競争を優位に進めようとするケースもあります。
特に、自国の企業のノウハウがサイバー攻撃により海外企業に流出するケースが問題視されています。
自己主張・自己顕示欲・愉快犯
金銭や情報の搾取ではなく、自身の考えを主張したり、注目を集めたりする目的で、サイバー攻撃が行われるケースも少なくありません。
なかでも、サイバー攻撃を通じて、自身の政治的・社会的主張をアピールする個人やグループを「ハクティビスト」と呼びます。
また、自ら悪意のあるソフトウェアを作り、インターネット上にばらまいたり送りつけたりすることで、自身のスキルをアピールする愉快犯も存在します。
サイバー攻撃の種類
サイバー攻撃には様々な種類があります。ここでは主要なサイバー攻撃である、以下の5種類について紹介していきます。
- マルウェア攻撃
- 標的型攻撃
- サプライチェーン攻撃
- フィッシング攻撃
- DoS/DDoS攻撃
マルウェア攻撃
マルウェアとは、「Malicious(悪意ある)」と「Software(ソフトウェア)」を組み合わせた造語で、悪意のあるソフトウェアの総称です。代表的なマルウェアとして、ウイルス・ワーム・ランサムウェア・スパイウェア・トロイの木馬・ボットなどがあります。
デバイスがマルウェアに感染した場合、情報漏洩(えい)やデータの破壊、金銭的な被害などが生じる場合があります。
マルウェアについては以下の記事で詳しく紹介しています。
標的型攻撃
標的型攻撃とは、特定の企業や組織を標的として狙ったサイバー攻撃です。
攻撃者がターゲットの取引先や知人などになりすまし、悪意のあるファイルやURLを添付したメールを送って、パソコンやスマートフォンといったデバイスをマルウェアに感染させる手法です。
標的型攻撃では、サイバー攻撃であると気付かれないよう、メールの内容が巧妙に偽装されているケースも少なくありません。
サプライチェーン攻撃
サプライチェーン攻撃とは、企業取引のサプライチェーン(供給網)に紛れ込み、関係先を経由して攻撃対象を狙うサイバー攻撃です。
大企業や政府機関など大きな組織を攻撃対象とする場合、高度なセキュリティ対策に阻まれる場合が多いです。そこで、比較的セキュリティが脆弱な子会社や取引先などを足がかりにし、最終的なターゲットへ攻撃を行います。
例えば、攻撃者は取引先からのメールを偽装し、ランサムウェアを仕込んだものをターゲットへ送信することで、対象を攻撃して金銭を要求します。
フィッシング攻撃
フィッシング詐欺は、 信頼性の高い企業や組織になりすまし、個人情報を窃取する攻撃方法です。
金融機関や公的機関、ショッピングサイトになりすまして電子メールを送信し、正規のWebサイトを模したフィッシングサイトへ誘導することで、クレジットカード情報や口座情報などをだまし取ります。
近年では、フィッシング詐欺による高額な物品購入や不正送金といった被害が増加しています。
DoS/DDoS攻撃
DoS/DDoS攻撃とは、対象に大量のデータを送りつけることでサーバーに負荷をかけ、アクセス障害や機能停止を引き起こすサイバー攻撃です。
DoS攻撃は一台の端末でサイバー攻撃を行いますが、DDoS攻撃の場合は複数台を使って攻撃をします。攻撃者は、マルウェアで乗っ取った複数のIPアドレスから分散的かつ同時に攻撃をするため、犯人の特定が難しいことが特徴です。
DDoS攻撃に関する詳細は、以下の記事をご参照ください。
企業ができるサイバー攻撃への対策

高度化および多様化するサイバー攻撃に対して、企業はどのような対策をとるべきなのでしょうか。ここでは、企業ができるサイバー攻撃への対策を5つご紹介します。
- 従業員へのセキュリティ教育を行う
- ソフトウェアやOSを常に最新版にアップデートする
- 二段階認証を導入する
- セキュリティソフトを導入する
- 万が一に備えてサイバー保険に加入する
企業としての対策を考えるうえで、ぜひ参考にしてください。
従業員へのセキュリティ教育を行う
従業員向けにセキュリティ教育を実施することで、一人ひとりの意識向上につながり、サイバー攻撃を未然に防ぎやすくなります。
サイバー攻撃の手口や最新の被害事例といった知識などを具体的に周知すると共に、以下のような教育を行いましょう。
- 不審なメールやサイトは開かない
- フリーWi-Fiの利用を禁止する
- ID・パスワードは特定されにくいものにし、厳重に管理する
- クラウドやドキュメントの共有範囲を適切に設定する
例えば、ID・パスワードは自分の誕生日といった短く単純なものではなく、複雑なものにし、使い回さないことが基本です。
従業員一人ひとりがセキュリティ意識を高く持つことによって、企業全体のセキュリティレベルもアップします。
ソフトウェアやOSを常に最新版にアップデートする
OSやソフトウェアのアップデートには、新機能だけでなくセキュリティ強化を目的とした修正も含まれます。そのため、常に最新版へアップデートしておくことが大切です。
古いバージョンを使い続けると、リリース時には見つかっていなかった脆弱性をついたサイバー攻撃を受ける可能性があります。日々進化しているサイバー攻撃に対応するためにも、定期的にアップデートを行い、リスクを軽減するよう企業で動きましょう。
二段階認証を導入する
サイバー攻撃への対策としては、二段階認証の導入も効果的です。二段階認証とは、ログイン時にIDやパスワードだけでなく、生体認証やSIM認証など複数の認証方法を必要とするものです。なかでも、記憶情報・所持情報・生体情報を組み合わせる多要素認証を行うと、セキュリティがより強化されます。
例えば、従業員のIDやパスワードが流出してしまった場合も、生体認証やSIM認証のフェーズがあれば、本人以外は認証を通過できません。その結果、攻撃者からの不正アクセスをブロックでき、サイバー攻撃から情報を保護できます。
セキュリティソフトを導入する
サイバー攻撃から保護するための、セキュリティソフトを導入することもおすすめです。
冒頭であげたように、サイバー攻撃は年を追うごとに多様化・高度化しています。セキュリティソフトは、サイバー攻撃の進化にあわせてアップデートされるため、最新の脅威からも企業のデータを守ることが可能です。
ソフトウェアやOSと同じく、常に最新版へアップデートしておくことが重要です。
万が一に備えてサイバー保険に加入する
サイバー攻撃の事例
サイバー攻撃はいつ自分の会社が対象になってもおかしくありません。ここでは、企業が被害にあったサイバー攻撃の事例を3つご紹介します。自社でサイバー攻撃対策を検討する際の参考にしてください。
大手動画配信サービス会社の事例
2024年6月に、大手動画配信サービス会社のA社がランサムウェアによるサイバー被害を受けた事例です。これによってシステム障害が発生し、サービスサーバーが停止、6月から2ヶ月間サイトは閉鎖に追い込まれました。
攻撃を行ったサイバー犯罪グループは、身代金の支払いに応じなければ盗み取った個人情報をすべて公開するとの声明を発表しています。
このサイバー攻撃によって、書籍の発行・流通を行うグループ会社も含め、甚大な被害が生じました。
健康食品会社の事例
従業員10名程度の健康食品会社B社は、運営するオンラインショップがサイバー攻撃の被害を受けました。
2020年10月に、クレジットカード会社からカード情報が流出した懸念があり、調査をしたところ、サイバー攻撃の痕跡が発見されました。過去にオンラインショップ上で入力された約290件のカード情報が流出した可能性があるとされています。
大手自動車メーカー・パートナー会社の事例
大手自動車メーカーのパートナー企業である自動車部品メーカーC社が、ランサムウェアに感染した事例です。
感染発覚にともない同社は社内サーバーをすべて停止し、結果として全14工場、28ラインが停止となり、延べ1万3,000台の生産が見送りとなりました。
サプライチェーン攻撃による甚大な被害例の一つといえるでしょう。