保険法の概要

1.保険法の改正

これまで
保険法商法 (第2編第10章「保険」の規定など)
保険法(平成20年法律第56号)
・商法から独立した「保険法」(単行法)として制定
・内容を大幅に見直し
  • 第169回通常国会において、「保険法」が成立しました。(平成20年法律第56号)
  • 従来の「保険法」は、「商法」第2編商行為第10章・第3編海商第6章の「保険」に関する規律を指すものでした。
  • 今回の改正では、商法から独立した「保険法」とし、保険契約者保護の観点などから内容も大幅に見直されています。
  • 保険会社に対する監督法規である「保険業法」は、今回の改正の直接の見直し対象ではありません。

2.保険法改正の背景と基本方針

  • (1)改正の背景
    • 保険法は、約100年間、実質的な改正が行われておらず、表記も片仮名・文語体のままでした。
    • 他方、民事ルールを定める法律の整備の流れがありました。(民法の現代語化、会社法の制定など)
  • (2)改正の基本方針
    • 保険契約の関係者間のルールを現代社会に合った適切なものとする。
    • 民事ルールを定める法律として、分かりやすい表現により 現代語化を行う。

3.保険法の主なポイント

  • 以下では、多岐にわたる改正事項のうち、主なポイントのみを説明しています。
  • (1)保険契約に関するルールの共通化
    ≪適用対象契約の見直し≫
    • これまでの商法は基本的に共済への適用はありませんでしたが、保険法は保険契約と同等の内容を有する共済契約にも適用されることとなります。これにより、法律上の基本的な契約ルールが同じになります。
  • ≪傷害疾病保険契約の規定の新設≫
    • これまでの商法では規定がなかった傷害疾病損害・定額保険契約*について、保険法では規定が新設され、契約の要件・効果などが明確化されます。
      • *傷害疾病損害保険契約とは、傷害疾病によって生じた損害を補償する保険契約をいいます。
        傷害疾病定額保険契約とは、傷害疾病に基づき一定の保険金をお支払いする保険契約をいいます。
  • (2)保険契約者(消費者)保護の実現
    ≪片面的(へんめんてき)強行規定の規律の新設≫
    • 片面的(へんめんてき)強行規定の規律が設けられ、保険法の規定よりも保険契約者、被保険者または保険金受取人に不利な内容の約款を定めても、その約款の定めは無効となります。(ただし、企業分野の保険商品は、適用が一部除外される場合があります。)
      • 片面的(へんめんてき)強行規定の対象となるのは、保険法の一部の規定です。
    ≪告知義務に関する改定≫
    • 告知義務*については、自発的申告義務から質問応答義務へ変更され、保険契約者または被保険者は、重要事項のうち保険会社から告知を求められた事項(告知事項)のみ告知すればよいこととなります。
      • *告知義務とは、ご契約時に、告知事項を正しく保険会社に告げていただかなければならない保険契約者・被保険者の義務をいいます。
    ≪通知義務に関する改定≫
    • 保険会社が通知義務*違反により保険契約を解除できるのは、告知事項に変更が生じたこと(危険の増加)について、保険契約者または被保険者が故意または重大な過失によって遅滞なく通知しなかった場合に限られることとなります。
      • *通知義務とは、保険契約のご契約後に通知事項に変更が生じた場合、その事実・変更内容を保険会社に遅滞なくご連絡していただかなければならない保険契約者・被保険者の義務をいいます。
    ≪保険給付の履行期の新設≫
    • 保険金の支払時期の規定が新設されます。
      これにより、適正な保険金支払のために不可欠な調査に要する時間的猶予は保険会社に認められていますが、その調査に必要となる合理的な期間が経過した後は保険会社は遅滞の責任を負うこととなります。ただし、保険契約者または被保険者が保険会社の調査を妨げたりした場合は、それにより遅滞した期間については、保険会社は遅滞の責任を負わないこととなります。 ≪他人を被保険者とする契約に関する規定の新設≫
      • 他人を被保険者とする生命保険契約・傷害疾病定額保険契約については、被保険者の同意を取り付けることが原則とされますが、次の①および②のいずれの条件も満たす場合には同意は不要とされます。
        ① 死亡保険金のみをお支払いする契約以外の契約であること。
        ② 被保険者またはその相続人が保険金受取人として定められていること。
      • 保険法成立の過程において、未成年者や被保険者になることに同意がない被保険者に関する死亡保険のご契約金額(保険金額)のあり方が議論され、また、保険法を巡る国会議論においても、未成年者の死亡保険につきまして、未成年者の保護の観点から特に配慮することが求められました。
        このような背景から、損保ジャパンでは、被保険者保護の重要性を踏まえ、2009年4月より、15歳未満の未成年者および被保険者になることについて同意のない被保険者に対しては、お引き受けする死亡保険金額に上限額(通算で1,000万円)を設けさせていただいております。詳しい内容につきましては、取扱代理店または損保ジャパンまでお問い合わせください。
        他人を被保険者とする生命保険契約・傷害疾病定額保険契約において、被保険者がいったん同意をしても、その後に保険契約者や保険金受取人との間の信頼関係が損なわれた場合や、同意の基礎となった事情に著しい変更があった場合(離婚した場合など)には、被保険者からの解除請求を認める規定(被保険者離脱制度)が新設されます。
  • (3)保険機能の拡充
    ≪超過保険に関する改定≫
    • 超過保険*については、超過部分が「無効」から「取消し可能」(取消しされるまでは有効)へ変更されます。
      • *超過保険とは、ご契約時において、ご契約金額(保険金額)が保険価額を超えている場合をいいます。
    ≪重複保険における独立責任額全額方式の導入≫
    • 同一の保険の対象に複数の損害保険が締結された場合(重複保険)の保険金支払方法として、独立責任額全額方式が導入されます。 これにより、保険会社は、重複契約がある場合であっても、他の保険契約がないものとして算出した補償すべき損害の額(独立責任額)について保険金をお支払いすることとなります。*1 なお、自社の本来の負担分(按分により算出)を超えてお支払いした保険会社は、後日、その超過分について、他の保険会社に請求します。*2
      • *1自社の独立責任額を超えてまでお支払いするものではありません。
      • *2お客さまは複数の保険会社から損害額を超えて保険金を受け取ることはできません。
    ≪賠償責任保険契約についての先取特権(さきどりとっけん)の新設≫ ≪重大事由による解除の新設≫
    • 保険金詐欺などのモラルリスクを防止するために重大事由による解除の規定が新設されます。 これにより、保険金を不法に取得する目的で事故を発生させた場合や保険金の請求について詐欺を行った場合など、保険会社と保険契約者または被保険者との間の信頼関係が損なわれ、契約の存続を困難とする重大な事由がある場合には、保険会社は保険契約を解除できることとなります。
    ≪保険金受取人による介入権制度の新設≫
    • 保険契約者の債権者などによる生命保険契約・傷害疾病定額保険契約の解除(解約ともいいます。)に対して、保険金受取人が保険契約を存続させることができる制度(介入権制度)が新設されます。
      保険金受取人が介入権を行使するためには、介入権行使について保険契約者の同意を得ること、保険会社が解除(解約)の通知を受けた時から1か月以内に解約返れい金相当額を債権者などに支払うことなど一定の要件が定められています。

4.経過措置(保険法附則第2条~第6条)

以下の規定については、経過措置により、保険法施行前に締結された契約にも適用されることとなっています。

経過措置の対象となる主な規定
・保険給付の履行期
・賠償責任保険契約についての先取特権(さきどりとっけん)
・保険金受取人による介入権制度
・重大事由による解除
  • 「重大事由による解除」の経過措置は、保険法施行日(2010年4月1日)より適用されます。
  • 「保険給付の履行期」「賠償責任保険契約についての先取特権(さきどりとっけん)」「保険金受取人による介入権制度」については、こちらポップアップをご覧ください。

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