【中国の医療費】日本と異なる医療制度

「中国と日本とでは医療費や医療保険制度はどのように違うのだろうか?」
「現地で病気やケガをした場合、医療費はいったいいくらかかるのか?」

中国への旅行や短期留学を考えている人や、海外赴任で中国に住む可能性のある人は、中国の医療事情を知りたいのではないでしょうか。

普段あまり病院に行く機会がなくても、旅行先や留学先で何が起こるか分かりません。その際、海外旅行保険などの備えが十分でなかったために、法外な医療費を負担するのは避けたいものです。

今回は、中国の医療の現状や病院の様子、治療費や入院費用は日本より高いのかなど、中国の医療制度について都市別に見ていきます。また、海外旅行保険に加入していた人の中で、旅行中に病気やケガをして中国で治療を受けた人の保険金支払事例も併せて紹介するので、参考にしてください。

中国の医療費事情

旅行などで外国に行く機会は多くても、現地で治療を受けた経験のある人は少ないのではないでしょうか。アジア各国、国によって医療制度やかかる医療費は異なります。まず、日本と中国の医療制度の違いや、中国の医療費事情を見ていきましょう。

中国の医療費負担は日本よりも高額

中国では、1949年の建国以降、国民皆保険を目指して公的医療保険制度の改革、整備を進めてきました。
諸外国の医療保障の現状を紹介するレポート「健保連海外医療保障 No.124 2019年12月」(健康保険組合連合会)によると、中国の公的医療保険制度は、戸籍や就業の有無によって大きく2つに分類されます。

レポートを参考に、日本と中国の制度を比較してみました。

保険制度 外来時の自己負担
日本 国民皆保険制度:国民全員が対象 原則3割負担
※年齢や所得によっては1割、もしくは2割負担
中国 公的医療保険制度
  • 都市職工基本医療保険(強制加入):都市で働く会社員(農村戸籍者も含む)、自営業者、公務員が対象
  • 都市・農村住民基本医療保険(任意加入):高齢者、非就労者、学生・児童、農村部住民、都市職工基本医療保険の被保険者に扶養されている家族が対象
地域ごとに制度の運営方法が異なるため、給付限度額・自己負担割合などが異なる。また、他地域で受診する場合は原則全額自己負担(一部償還も可能)となっている

日本も中国も「国民皆保険制度」を採用している点では同じですが、制度の内容はさまざまな点で異なっています。

日本の制度の大きな特徴は、国民全員を公的医療保険で保障すること、全国どこの医療機関でも自由に受診できるフリーアクセスであること、全国どこでも医療費はほとんど変わらず、同じレベルの医療サービスが受けられることなどです。

一方、中国の医療制度は戸籍や就業の有無によって加入できる制度が2つに分かれており、公的医療保険制度でありながら、強制加入と任意加入が並存しています。
また、日本のように患者の希望で全国どこでも受診できるフリーアクセスではありません。自分が保険料を払っている地域以外で受診する場合は、全額自己負担が原則であること、病院のレベルなどによって自己負担額が異なる点なども特徴として挙げられます。

中国では、公的医療制度によって基本的な医療サービスは保障されるものの、よりいい病院、医師や薬、よりレベルの高い医療サービスを求める場合は、医療費の負担は高額になるといえます。

中国の医療費の推移と病院事情

中国では、高齢化が急速に進み、がんや心血管疾病などが増え、疾病構造が欧米型に変化してきました。それに伴い、国民一人当たりの医療費は大幅に上昇しています。WHO(世界保健機関)のデータ(Global Health Expenditure Database)によると、2000年には一人当たり43ドルだった医療費が、2015年には426ドルと約10倍に増えました。
公的医療保険制度も、改革、整備が進められていますが、日本とは異なる以下のような特徴があり、現地で治療を受ける場合は、病院事情をよく把握しておくことも大切です。

  • 医療の地域間格差

    レベルの高い医療機関は都市に集中しており、医療の地域間格差が大きくなっています。農村部の住民が、よりレベルの高い医療を求め、都市をまたいで受診する場合は、より多くの自己負担額を覚悟しなければなりません。

  • 病院が等級分けされ、等級が高いほど自己負担割合が高くなる

    中国の国公立病院は、規模によって1〜3級に分かれています。大学病院に相当する3級が最もランクが高く、3級病院への集中を避けるため、等級が高くなるに従って自己負担の割合が高くなるように設定されています。

  • 前払制

    治療後にまとめて支払う日本のシステムと違って、中国では受付時、医師の指名時、カルテ作成時など、その都度前払する必要があります。また、検査や入院時には、保証金も支払わなければなりません。

  • 救急車は有料

    公共のサービスとして救急車(120番)がありますが、有料です。基本料金の他、走行距離によって料金が加算され、医療従事者が治療や投薬を行った場合、心電図などの機器を使用した場合などは別途請求されます。一般的に英語は通じず、中国語での対応となるため、旅行者などの場合は注意が必要です。

  • レベルの高い医療を希望する場合は医療費が高額になる

    中国では、医師のランクによって初診料が異なる他、診療内容、使用する医療機材、治療薬によって、医療費も変わってきます。公的保険で給付される医療費には限度額が設けられており、がんや心疾患など大病を患い、よりレベルの高い医療を希望する場合は、自己負担が高額になりやすい傾向があります。

中国(都市別)の医療事情と支払事例

中国の医療事情について概要は分かりましたが、実際はどの程度の費用がかかるのか、都市ごとに見ていきましょう。さらに、中国への旅行中に病気やケガの治療を受けた場合の費用について、損害保険ジャパンの支払い例から、一部をご紹介します。

北京の医療費

中国の首都・北京は、秋田県や岩手県とほぼ同じ緯度にあるため、冬の寒さは厳しく、夏は雨が多い気候です。経済、文化の中心地であり、北京には、万里の長城、北京故宮など世界遺産も多いため、観光に行きたいと考えている人も多いのではないでしょうか。

外務省の海外安全ホームページによると、北京の医療レベルは高く、外国人専用の外来のある国公立病院や、英語や日本語が通じる外資系クリニックもあります。ただし、日本に比べると医療費はかなり高くなるようです。
例えば、外資系クリニックを受診した場合、風邪や胃腸炎でも1,000元以上必要です。日本円に換算すると約15,300円(1元=15.3円/2020年6月4日現在)になります。中国の医療制度では、希望する医療のレベルが高くなるほど支払う額も多くなるため、大きなケガや重大な疾病の場合は、請求額が多くなることを覚悟した方がいいでしょう。
なお、中国の多くの医療機関では海外旅行保険が使用できます。万が一に備えて、外務省では旅行などの際は加入することを推奨しています。

北京市内の交通量は多く、日本人が事故に巻き込まれるケースも多いため、交通事故には特に注意が必要です。また、大気汚染は改善されつつありますが、天候によっては空気が悪くなるため、滞在中は大気汚染の状況をチェックして、マスクで予防しましょう。

上海の医療費

鹿児島県と同じ緯度にある上海市は、夏は暑さが厳しく、冬は氷点下になることもあります。上海には歴史的名所も多く、近代的なショッピングセンター、動物園や遊園地などテーマパークもあるため、観光客にも人気です。

中国では、救急車も含め、国公立の病院などでは日本語はもちろん、英語が通じない場合もあります。
しかし、上海市には、日系クリニックや日本人医師がいる外資系クリニックがいくつかあるため、日本語が通じます。ただし、ほとんどのクリニックが入院設備を持たないため、入院が必要な場合はクリニックの紹介で中国系の病院に行くことになります。
上海市の2級、3級病院には、北京と同様に外国人や富裕層専用の部門があり、レベルの高い医療を受けられますが、中国人の一般料金よりも高く設定されています。予想外の出費に備えるためにも、海外旅行保険に加入しておいた方がいいでしょう。

また、上海市周辺の浙江省、江蘇省、安徽省、江西省には3級に相当する病院が少なく、万が一の場合は、上海市や日本の病院への転院が必要になる場合もあります。海外旅行保険に加入する場合は、治療費用以外にも、搬送費用や救援者費用にも備えることをおすすめします。

上海では北京同様、交通事故への注意が必要です。車だけでなく、スクーターや自転車などもスピードを出して歩道を走るケースも多いため、街を歩くときは十分に注意しましょう。

中国での保険金支払事例

ここまで、中国の都市別に医療費を見てきましたが、旅行中など中国に滞在中に病気やケガの治療を受けた人は、実際どれくらいの費用を支払ったのでしょうか。
損害保険ジャパンの海外旅行保険に加入していた人の事例から、一部をご紹介します。

事例1)
22歳の男性が、チベット自治区のラサで路線バスに乗車中、事故に遭遇しました。脛の部分を複雑骨折したほか、下肢に裂傷と挫傷を負い、現地で手術。事故5日後に、より衛生面・医療設備の整った北京の病院にチャーター機で搬送し、事故から17日後に退院しました。日本へは看護師が付き添い、ビジネスクラスで帰国。バス会社からは、3,000元(約45,900円)が支払われました。このケースでは、加入していた海外旅行保険から、治療費用、搬送費用として、総額666万円の保険金をお支払しました。

事例2)
44歳の男性が、大連で脳出血を起こし、現地の病院で血腫除去手術を受けました。ICUを含め25日間の入院・治療後、日本で治療を受けるため、医師・看護師付添いのもとストレッチャーで帰国。このケースでお支払した保険金は、治療費用、日本への搬送費用として総額238万円でした。

事例3)
19歳の男性が、落とした眼鏡を拾おうとして、建物2階の窓から転落してしまいました。腰椎骨折の大ケガを負い、現地で2回の手術を行い、30日間入院。日本へ帰国後も入院して治療が必要なほどのケガでした。このケースでは、治療費用、搬送費用、救援者費用として、総額1,076万円の保険金をお支払しました。

事例4)
21歳の女性が、短期留学中の北京で、喉の痛みと息苦しさを訴え、救急車で運ばれました。現地の病院で、急性咽頭炎と診断され、6日間入院しました。このケースでは、治療費用として15万円お支払しました。

ここで紹介した実例から、旅行先や短期留学先で病気やケガをした場合は、治療費用などの他に、搬送費用や救援者費用が必要になる場合もあることが分かったのではないでしょうか。

海外旅行保険があれば旅行中も安心

急な病気やケガで、中国の医療機関を受診した場合、治療内容によっては、高額な医療費がかかる可能性があります。旅行や短期留学などで中国に行く際は、いざというときに備えるために海外旅行保険への加入をおすすめします。

海外旅行保険への加入は、外務省でも推奨しています。病気やケガ、盗難や破損などのトラブルやリスクに不足なく対応するためにも、中国に行く際は海外旅行保険へ加入しましょう。地域によって医療のレベルに格差がある中国では、治療費用の他に、転院のための搬送費用や家族などに来てもらうための救援者費用などの補償が充実しているプランを選んだ方が、もしもの場合に安心だといえます。

また、中国では、救急車も含め、治療費や薬代などの医療費は前払制です。手持ちの現金がなければ、最適な治療が受けられない場合もあります。また、ほとんどの病院で日本語が通じません。
急な病気やケガの場合、現地の情報を知らない観光客にとっては、救急車の手配や医療機関を探すことだけでも大変です。海外旅行保険に加入すると、医療機関の紹介や救急車、入院、通訳などの手配、キャッシュレス診療などのサービスが利用できます。保険を選ぶ際は、補償内容だけでなく、保険に付随しているサービスやサポートにも目を向けることをおすすめします。

損害保険ジャパンの海外旅行保険には、充実したサービス・サポートが付随しています。
旅先での病気やケガに対して、「医療アシスタンスサービス」を行っています。現金不要で治療ができ、病院への予約、通訳手配など円滑な治療へのサポート体制も充実しています。
また、新型コロナウイルス感染症は病気に起因するものとして、保険金のお支払いの対象となります。ただしお支払いするにあたって条件があるため、詳細は以下ページをご覧ください。

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(*)
アジア旅行(個人・保険料抑えたいプラン・4日間)において、店頭販売商品(海外旅行総合保険)料率での計算と比較した場合

まとめ

中国へ旅行や短期留学に行った際に、病気やケガで現地の病院で治療を受けることがあるかもしれません。その際、海外旅行保険などの備えが十分でなかったために、法外な医療費を負担するのは避けたいものです。

中国には日本のような公的医療保険制度がありますが、日本の制度とは大きく異なるため、治療内容によっては医療費が高額になる場合があります。

「日本語がほとんど通じない」「地域によって医療のレベルに格差がある」など、よりよい治療を受けるためには、現地の病院事情をよく分かっていて、適切にサポートしてくれる体制があると安心です。

中国で診療を受ける際のリスクを抑えるためにも、サポート体制の充実した海外旅行保険への加入は必須です。また、海外旅行保険は、盗難や紛失、破損といったトラブルにも備えられるので、補償内容を事前によく調べて、加入することをおすすめします。

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