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外国人ドライバー受け入れの現状と実務的課題

物流の「2024年問題」と2026年最新制度改正の背景
日本の物流・運送業界は、かつてない構造的危機に直面している。少子高齢化に伴う労働力人口の減少に加え、2024年4月から適用された「働き方改革関連法」によるトラックドライバーの時間外労働上限規制(2024年問題)は、国内の輸送能力を大幅に低下させる要因となっている。
この「物流危機」を打開すべく、政府は2024年3月29日に在留資格「特定技能」の対象分野に「自動車運送業」を追加することを閣議決定した※1。さらに、2026年1月23日には、配送拠点での人手不足解消を目的として「物流倉庫」分野も特定産業分野に追加された(育成就労制度は2027年4月より運用開始)※2。
本レポートでは、公益社団法人全日本トラック協会(以下、全ト協)の指針や最新の統計に基づき、外国人材受け入れの実務、コンプライアンス、および今後の展望について考察する。
- ※1 出典:『自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針』
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001985664.pdf
- ※2 出典:国土交通省『物流倉庫分野における特定技能外国人・育成就労外国人の受入れについて』
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/warehousing_ssw.html
受入事業者に求められる要件と法規制
事業者要件(安全性と職場環境)
外国人材を受け入れる所属機関(受入企業)には厳しい要件が課されており、全分野共通の要件としては、労働・社会保険・租税に関する法令遵守はもちろん、過去1年以内に非自発的離職者や外国人の行方不明者を発生させていないことが求められる※3。
また、10項目の義務的支援※4の実施のほか、自動車運送業トラック区分の上乗せ要件として、自動車運送事業を経営する者であること、「自動車運送業分野特定技能協議会」(特定技能制度の適切な運用を図るために設置される機関)の構成員となることに加え、以下のいずれかの認定を受けていることが要件となっている(図表 1参照)。
1.働きやすい職場認証の取得 ※KEY WORD参照
2.安全性優良事業所(Gマーク)の保有

図表 1 自動車運送業トラック区分の上乗せ要件
雇用形態と賃金水準
特定技能外国人は「直接雇用」かつ「フルタイム」でなければならない。賃金については、同等の業務に従事する日本人労働者と同等以上であることが義務付けられており、不当な低賃金労働は厳格に禁止されている。
特にフィリピン国籍者の採用については、フィリピン移住労働者省(DMW: Department of Migrant Workers)への企業登録や雇用契約書の確認といった特有のプロセスが存在するなど、国籍による手続きの差異に注意が必要である※3。
- ※3 出典:公益社団法人全日本トラック協会『自動車運送業分野 トラック区分における特定技能外国人受け入れの手引き』(2024.05.31)
https://jta.or.jp/wp-content/uploads/2024/08/ssw_tebiki.pdf
- ※4 義務的支援10項目:①事前ガイダンス、②出入国する際の送迎、③住居確保・生活に必要な契約支援、④生活オリエンテーション、⑤公的手続等への同行、⑥日本語学習の機会の提供、⑦相談・苦情への対応、⑧日本人との交流促進、⑨転職支援(人員整理等の場合)、⑩定期的な面談・行政機関への通報
採用から実務開始までのプロセス(免許取得と日本語教育)
「特定活動」を活用した免許取得ステップ
海外からドライバーを採用する場合、最大の障壁は「日本の運転免許」の取得である。国際運転免許での就業は不可であるため、実務上は以下のステップを踏む※3。
①特定活動ビザによる入国:
最長6か月間、免許取得の準備期間として付与される。この期間は運転業務はできないが、それ以外の関連業務(荷役・清掃等)に従事させることが可能である。
②外免切替(外国免許からの切り替え):
外免切替は、外国での免許取得後、当該国等に通算3か月以上滞在していることが条件となる。特定活動期間中に事前審査(面談・審査)を経て、試験(適性試験、知識確認、技能確認)を受験し、日本の運転免許証を取得する。(外免切替によらず、日本人と同様に自動車教習所を卒業し日本運転免許を取得することも可能である。)
③特定技能ビザへの切り替え:
外免切替等による日本免許取得後、速やかに特定技能ビザに切り替える。①の特定活動ビザは更新不可であり、6か月以内に免許を取得できない場合、引き続きの雇用は不可となる。特定技能の在留期間は5年であり、活動制限のない在留資格(永住者、日本人の配偶者等)を取得しない限り、引き続きトラックドライバーとして雇用することはできない※5。
免許センターでの外免切替試験は「適性試験」「知識確認」「技能確認」から成る※3。適性試験は視力、色彩、聴力、運動能力の検査である。知識確認は外国語での実施もあるが、技能確認(実技)は日本語対応のみであり、通訳の同乗も不可である。「安全性重視」の厳しい判定基準により不合格となるケースが多く、十分な事前研修が必要とされる。
免許は技能確認に合格した当日交付可能であり、自動車教習所や自動車事故対策機構(NASVA)等での適性診断、トラック協会等主催の初任運転者研修(座学:15時間以上、実車指導:20時間以上)を経て、単独乗務開始となる。
現場でのコミュニケーション能力
特定技能「自動車運送業」の入国要件は、日本語能力試験の「N4」以上、または国際交流基金日本語基礎テスト、技能実習2号の良好修了となっている※3。これは「基本的な語彙や漢字を使い、日常生活に支障がない程度」のレベルを指すが、実際の運送現場では、この基準だけでは不十分なケースが多い。したがって、採用後も自社の具体的業務に即したOJTや日本語教育を実施するとともに、求人の際に、求める日本語能力レベルについて検討することも重要である。
①専門用語:運送現場では「宵積み(よいづみ)」「横持ち(よこもち)」といった独特の業界用語が必要。
②読解力:道路標識や荷札(伝票)、運行指示書の漢字を誤認しないよう、写真付き指示書や多言語ナビの活用の検討が重要。
③既存社員の教育・訓練:「やさしい日本語」(短い文章、明確な指示など)を用いるよう、また異文化を理解するよう研修を行うなど、既存社員を教育・訓練することが重要※3。
- ※5 出典:公益社団法人全日本トラック協会『外国人特定技能制度に関する説明会 Q&A集』(2024.06.06)
https://jta.or.jp/wp-content/uploads/2024/06/ssw_qanda.pdf
受入体制の整備
導入・維持コスト
外国人材の受け入れには、1人あたり60万円程度の人材紹介費に加え、月額5万円程度の支援委託費が発生する※3。また、ビザ取得費※6や渡航/国内移動費、寮の手配では敷金・礼金・保証金等が想定されるが、法人契約の場合、それら費用を特定技能外国人に負担させることは不可とされる。家具家電やWi-Fi等も受入企業が準備するのが一般的である。
異文化・宗教への配慮
宗教や文化への配慮は、外国人材の定着促進のみならず、安全運行を担保する上でも不可欠である。具体的には、イスラム教のラマダン(断食)期間中の事故防止に向けた勤務調整、禁忌(豚肉・アルコール)を除いた食事対応(ハラール等)、またヒンドゥー教での牛肉の完全排除やベジタリアン対応、祈祷場所の確保、母国の祭礼に合わせた休暇取得など、個々の背景を尊重した柔軟な対応が、現場の安全と信頼を支える鍵となる。
- ※6 国内採用・ビザ更新の場合:収入印紙代4,000円、書類作成・申請を委託する場合:1名・1回の申請あたり20万円程度(手続きが煩雑なため、委託が一般的)
特定技能制度の最新動向と拡張
特定技能1号評価試験の実績
特定技能1号評価試験(トラック)の試験実績は、制度開始直後の2024年12月にはわずか62名であったが、2026年4月には523名が受験、合格者数は過去最大の380名に達している(図表 2参照)。合格率は概ね70%前後で推移しており、一定の技能を有する特定技能外国人が着実に確保されつつあることが読み取れる。
図表 2 特定技能1号評価試験実績まとめ(2024年12月~2026年4月)
出典:日本海事協会ホームページより筆者作成
https://sswt-portal.classnk.or.jp/news/22
「物流倉庫」分野の追加
2026年1月23日の閣議決定により、物流倉庫分野が特定技能1号および育成就労(2027年4月1日から運用開始)の対象に追加された。これにより、運送事業者は「類型C」の枠組みを用いて、自社倉庫や配送センターでの倉庫作業員として外国人を受け入れることが可能となった(図表 3参照)。※特定技能外国人を雇用する場合、分野ごとの特定技能協議会への加入が必須
本分野の追加は、トラック運送事業者にとって二つの大きな意義を持つ。第一に、物流拠点全体の安定化である。ドライバーだけでなく、その運行を支える倉庫内の入出庫や検品業務にも外国人材を配置できるようになったことで、物流インフラ全体での人手不足解消が期待される。第二に、実務に即した段階的な職種転換の選択肢である。入国初期に倉庫作業を通じて日本の物流現場や専門用語に慣れ、その後にドライバーへと職種変更する「育成ルート」のほか、倉庫実務のスペシャリストとして現場管理(マネジメント)を目指すルートなど、本人の適性に応じた多層的なキャリアパスの構築が可能となる。
ただし、特定技能1号としての在留期間は分野を跨いだ場合でも通算で上限5年である。現在の制度上、自動車運送業および物流倉庫分野は「特定技能2号」の対象外となっており、5年を超えて継続雇用するための受皿がまだ整備されていない※7。そのため、事業者側には、限られた5年という期間内での計画的な人員配置が求められるとともに、業界全体として将来的な「2号」対象分野への追加や、長期雇用を可能にする制度改善を注視していく必要がある。
図表 3 外国人材を受け入れられる事業者の類型(物流倉庫分野)
出典:国土交通省『物流倉庫分野における特定技能外国人・育成就労外国人の受入れについて』
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/warehousing_ssw.html
- ※7 出典:出入国在留管理庁『特定技能外国人受入れに関する運用要領』(2026.04)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001460079.pdf
結論:選ばれる物流事業者となるために
特定技能制度による外国人ドライバーの受け入れは、単なる人手不足の補填ではなく、物流DX(ICT活用)とコンプライアンスの強化を伴う「組織改革」の好機である。日本人・外国人を問わず「誰もが働きやすい職場」を構築することこそが、2024年問題以降の生き残り戦略に他ならない。
KEYWORD 働きやすい職場認証制度
正式名称は「運転者職場環境良好度認証制度」。自動車運送事業の運転者不足に対応するため、職場環境改善の取り組みを「見える化」して人材確保を後押しすることを目的に令和2年度に創設された。①法令遵守、②労働時間・休日、③心身の健康、④安心・安定、⑤多様な人材の確保・育成、⑥自主性・先進性等の6分野について、日本海事協会が審査を行い「一つ星」から「三つ星」までの認証を行う。認証事業者は、ハローワークの求人票への認証マーク表示やマッチング支援といった活用が可能となる。
- (注1)2026年7月時点の情報をもとに作成しております。
- (注2)トップ画像は生成AIを用いて作成しております。
コンテンツ提供:NX総合研究所
NX総合研究所は、60年以上の実績を持つ物流に特化した「ロジスティクスのプロ」です。「ひと」「モノ」「環境」という幅広い視点から、国内だけでなくグローバルで、物流コストの削減、作業の効率化、品質向上という身近なテーマに加え、サプライチェーンの全体最適化や物流会社の経営支援までお手伝いしています。





























