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物流現場のデジタル化推進

はじめに
近年、我が国の国家戦略の一環として、物流業界ではデジタル化の推進による業務効率化が強く期待されている。本稿では、デジタル化の取り組みに関する基礎知識、デジタル化の推進事例を紹介し、最後にデジタル化への期待について整理する。
デジタル化の取り組みに関する基礎知識
ここでは、デジタル化の取り組みに関する基礎知識として、総合物流施策大綱、デジタル化の狙い、物流事業者のデジタル化の対象となる業務工程、デジタル化を進める上での課題について整理する。
現在の日本の物流政策は、2021年6月に閣議決定された「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」に基づき展開されている。同大綱では、単なるデジタル化や機械化にとどまらず、オペレーションの改善や働き方改革を通じて、物流業界のビジネスモデル自体を革新し、従来の物流のあり方を変革することが期待されている。
同大綱は対象範囲が広いため、本稿では物流事業者のデジタル化に焦点を当て、取り組みの基礎知識を整理する。
はじめに、物流業務におけるデジタル化の狙いの概念図を図1に示す。同図から、アナログな工程をデジタル化し業務効率化を図ることで、物流事業者の生産性向上のみならず、荷主や物流事業者全体の生産性向上が期待されていることが分かる。
図1 デジタル化の狙いの概念図
- 出典:国土交通省総合政策局物流政策課,中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き、2023年3月
次に、運送事業者および倉庫事業者における物流工程について図2示す。一般的な倉庫業務の工程は、入荷、保管、出荷、出荷引き渡しであるが、同図はその前半部分である入荷工程を表している。同図の凡例から読み取ると、運送事業者においてデジタル化による生産性向上が見込める業務は、契約、見積、受注、配車計画、配車手配、配車表確認、点呼、車両点検、入館管理、完了連絡、退館管理、貨物照会である。
また、運送事業者および倉庫事業者においては、契約業務、計画立案業務、連絡業務等に関して、迅速かつ正確で遅延のない緻密な事務手続きが求められることが、同図から読み取れる。
図2 業務工程のイメージ
- 出典:国土交通省総合政策局物流政策課,中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き、2023年3月
次に、デジタル化推進における課題について述べる。図3は運送事業者におけるデジタル化推進上の課題を示している。同図から、デジタル化を進める上位5位の課題は、①イニシャルコスト(導入費用)の問題、②ランニングコスト(維持費用)の問題、③自社内での優先度が低い、④デジタル化をリードする専門部署が存在しない等の組織・人材の不足、⑤どのシステムを選べばよいかわからない(似たものが多くて選べない)である。同図から、運送事業者においてIT予算・人材・知識不足などが懸念されることが読み取れる。
図3 運送事業者におけるデジタル化を進める上での課題
- 出典:国土交通省総合政策局物流政策課,中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き、2023年3月
デジタル化の推進事例
ここでは、契約、配車、バース予約による接車受付の工程に関する三つのデジタル化推進事例を紹介する。
一つ目の事例として、電子契約システム導入による契約業務効率化の事例のイメージを図4に示す。
電子契約システムは、契約書や覚書などの法的文書を電子データとして作成、送付、捺印、データ保管するためのITシステムである。
主な機能として、契約書のアップロード、承認フロー管理、電子署名、タイムスタンプ付与、契約書の保管・検索機能などが挙げられる。
同図左は導入前の状況であり、契約書の印刷や押印作業に時間がかかり、契約締結までに多くの時間を要していた。さらに、運送契約書や業務請負契約書は印紙課税の対象となるため、コスト増の要因となっていた。加えて、郵送作業や到着確認業務など、事務手続きが煩雑であった。
導入後は、1週間程度かかっていた契約業務が即承認となり、数時間で完了できるようになり、契約までのリードタイムが大幅に短縮された。また、契約書がシステム上で一元管理されることで、過去資料の検索や管理も容易となった。
図4 電子契約システムの導入イメージ
- 出典:国土交通省総合政策局物流政策課,中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き、2023年3月
二つ目の事例として、配車計画システムの導入イメージを図5に示す。
配車計画システムとは、車種や最大積載重量などの車両情報、住所や届け先名などの配送先情報をもとに、ソフトウェア上で配送計画表や配送ルートマップなどの配車結果を出力するソフトウェアである。
同図左は配車計画システムの導入前の状況であり、運転日報を紙で作成し、運行管理者は紙ベースで運転日報を保管・管理していた。また、事務所から長距離運行中のドライバーへ配車計画を連絡する際、携帯電話でのやり取りとなるため、運転中は電話に出られず、リアルタイムでの連携が困難であった。さらに、月末の請求書作成時には紙の運転日報を基に整合性を確認するため、実績照合に2、3日の手間が発生していた。
同図右は導入後の状況であり、データ統合により締め日前の実績突合せ作業が経理のみの作業となり、作業時間は2、3時間に短縮された。さらに、配車担当者の業務負荷が減少し、最適な配車計画の立案が可能となり、配送効率の向上が実現した。
図5 配車計画システムの導入イメージ
- 出典:国土交通省総合政策局物流政策課,中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き、2023年3月
三つ目の事例として、バース予約システムを活用した接車受付作業の効率化事例を紹介する。
バース予約システムとは、物流センターの入出荷バースにおいて、トラックやトレーラーが積み降ろしを行う際、運送事業者の管理者やドライバーが事前にオンライン上で、入出荷バースの利用日時等を予約できるITシステムである。
主な機能として、バース予約受付、バーススケジュール管理、車両受付機能、車両呼び出し機能、待機車両・遅延車両管理、メールやSNSへの通知・連絡機能などがある。
図6にバース予約システムの導入前後における車両待機状況のイメージを示す。
同図左は導入前の状況であり、物流センター周辺道路に多数の待機車両が停車している状況を示している。従来、到着順で入庫対応するルールのため、多くのドライバーは早い順番を確保するため営業開始時刻よりも早く到着し、待機車両が発生していた。待機時間2時間以上の長時間待機車両の割合は70%以上であった。
同図右は導入後の状況である。事前予約制の導入により、待機時間1時間以内がほぼ100%となり、待機時間が大幅に削減された。
図6 バース予約システムの導入前後における車両待機状況のイメージ
- 出典:国土交通省総合政策局物流政策課,中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き、2023年3月
おわりに
本稿では、デジタル化の取り組みに関する基礎知識、三つのデジタル化推進事例について紹介した。
物流業界では深刻な人手不足のため、ITシステムによる効率化が期待されているが、物流事業者においてはITシステム投資の資金不足やIT人材不足などの懸念がある。
デジタル化推進に関する荷主への期待として、ITシステムの導入は物流事業者単独では限界があり、荷主の協力が不可欠である。
今後、荷主、運送事業者、倉庫事業者を含めた物流業界全体でITシステムを活用することで、物流の効率化と持続可能な物流システムの構築が期待される。
KEYWORD 配送効率とは
配送業務の効率性を数値で表すことで、その数値を効率指標という。配送業務における効率指標としては、車両への積載量の割合を示す「積載率」、1日の運行回数を示す「回転率」、車両の1日の実働時間の割合を示す「実働率」が主に使われる。その他に、貨物を積載して走行した距離割合を示す「実車率」、車両が1ヵ月間に稼働した日数割合を示す「稼働率」もある。
- (注)出典:ロジスティクス用語辞典 日通総合研究所【編】
- (注1)2025年9月時点の情報をもとに作成しております。
- (注2)トップ画像は生成AIを用いて作成しております。
コンテンツ提供:NX総合研究所
NX総合研究所は、60年以上の実績を持つ物流に特化した「ロジスティクスのプロ」です。「ひと」「モノ」「環境」という幅広い視点から、国内だけでなくグローバルで、物流コストの削減、作業の効率化、品質向上という身近なテーマに加え、サプライチェーンの全体最適化や物流会社の経営支援までお手伝いしています。





























