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  • トレンドレポート

物流DX導入事例

物流DX導入事例

はじめに

今日、物流業界では、物流DXの推進が強く期待されている。本稿では、物流DXの定義、物流分野における物流DXの導入事例、物流DX導入時のポイント、物流DXへの期待について、平易に紹介する。

物流DXとは

はじめに、国土交通省の物流DXに関する施策を紹介する。

図1に物流DXの定義を示す。国土交通省によれば、物流DXとは、「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と定義される。同図より、物流DXにより他産業に対する物流の優位性を高めるとともに、我が国産業の国際競争力の強化につなげることが期待されている。また、物流DXの取り組みとしては、物流分野の機械化と物流のデジタル化が相互に連携することで、サプライチェーン全体での機械化・デジタル化を進め、情報・コスト等を見える化し、作業プロセスの単純化・定常化が期待されている。

図1 国土交通省における物流DXの定義

図1 国土交通省における物流DXの定義

  • 出典:国土交通省総合政策局物流政策課、最近の物流政策について、2021年

物流DX導入事例

ここでは、物流DX導入のイメージとして、物流事業者に馴染みやすいデジタル化および機械化に関する2つの導入事例を紹介する。加えて、各事例の紹介後に、導入理解を深めるため、物流現場へのDX導入時のポイントを整理する。

第一のデジタル化の事例として、宅配業の配送スタッフ向け配送業務における電子マニュアル導入の背景、導入技術、効果について紹介する。

電子マニュアルを導入した背景は、配送スタッフ向けのマニュアルが130本近く存在し、マニュアルの陳腐化、属人的な業務判断の介在といった課題が散見されたことである。

電子マニュアル導入の狙いは、マニュアル作成および更新業務の効率化と、マニュアルに基づく作業の現場定着にあった。

導入技術としては、電子マニュアルをクラウド上で支援する市販のパッケージソフトを採用した。電子マニュアル作成では、マニュアルのステップ化や画像編集が容易であり、1つの動画から多数の画像の切り出しが可能である。電子マニュアルのため、検索・閲覧・視聴が容易で、利便性に優れた仕組みである。

図2に電子マニュアルのイメージを示す。同図は配送スタッフ用マニュアルの例であり、配送スタッフはスマートフォンを用いて、いつでもどこでも、必要な業務のマニュアルを敏速に検索・確認できる。

導入効果として、業務浸透の徹底、離職率の改善、マニュアル作成・更新の効率化、人材育成・研修の効率化が確認された。

図2 配送業務の電子マニュアルのイメージ

図2 配送業務の電子マニュアルのイメージ

  • 出典:国土交通省、物流・配送会社のための物流DX導入事例集、2022年

次に、図3に、物流現場向けの一般的な電子マニュアル導入における重要ポイントについて紹介する。

電子マニュアル導入における重要ポイント
1 目的の明確化
2 現場ニーズへの対応
3 利便性・操作性の向上
4 更新・管理体制の構築
5 教育体制の構築

図3 物流現場向けの電子マニュアル導入における重要ポイント

  • 出典:各種資料より株式会社NX総合研究所作成

同図を用いて、物流現場向けの電子マニュアル導入における重要ポイントを5つ紹介する。

第一に、目的の明確化である。一般的な物流現場における導入目的として、作業品質の均一化、教育時間の短縮、新人作業スタッフの即戦力化、新規業務や作業手順等の変更による最新情報の敏速な共有、マニュアル作成業務の効率化などが挙げられる。

第二に、現場ニーズへの対応である。一般的な物流現場ニーズの例として、作業手順書、作業マニュアル、システム操作マニュアル、イレギュラー対応、緊急業務対応など、複数業務に必要な情報が過不足・重複なく体系的に掲載されていることが求められる。誰にでもわかりやすいように、文字情報だけでなく写真や動画を含めることで、作業理解が深まりやすい。特に、電子マニュアルでは、動画ファイルの活用が容易であり、動画による視覚・聴覚に訴える情報は、管理者だけでなく現場スタッフにも好評である。

第三に、利便性と操作性である。PC、タブレット、スマートフォン等のマルチデバイス対応、日本語だけでなく英語等の多言語対応、高齢者でも見やすい大フォント表示、誰でも直感的に操作が可能なユーザーインターフェイス等が挙げられる。

第四に、更新・管理体制の構築である。大規模な物流センターや配送センターでは業務が多岐に渡るため、業務別の電子マニュアル更新担当者の明確化、更新内容の可視化、バージョン管理、更新履歴管理などに対応していることが望ましい。

第五に、教育体制の強化が挙げられる。新人作業スタッフ向けの入所教育プログラムの整備、新業務の発生時や業務変更に伴う新マニュアル等のアップデート状況の可視化、全スタッフの視聴状況の履歴管理、習熟状況を把握するための理解度テストの実施、作業内容の理解が不十分な作業スタッフへの補習教育の履歴管理などが挙げられる。

なお、最新の電子マニュアルのパッケージソフトでは、AI活用によりマニュアル作成業務を容易化する機能を備えたサービスも見られる。例えば、手書き文字をAIで文字起こしや、パワーポイントファイルからのAI自動動画作成、AIによる字幕および音声による自動多言語化など、便利な機能の活用も検討できる。

次に、第二の機械化の事例として、メーカーのパーツセンターにおけるAGV(Automated Guided Vehicle:自動搬送装置)の導入により、入出庫搬送業務を自動化して生産性を向上させた事例を紹介する。

AGV導入の背景として、物流倉庫における入出庫搬送時間の短縮と、作業負荷軽減の必要性が挙げられる。

導入したAGVのイメージを図4に示す。同図より、搭載搬送タイプ、滑り込み牽引タイプ、引っ張り牽引タイプなどが一般的である。

図4 AGVのイメージ

図4 AGVのイメージ

  • 出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集 国土交通省総合政策局物流政策課 2022年

AGVの導入効果として、入出庫搬送の負荷軽減と自動搬送の実現が挙げられる。加えて、AGVのレンタルの活用により物流量への繁閑差に対応等した結果、総じて生産性が15%向上し、2名相当の省人化という効果を得た。

次に、図5に、物流現場向けのAGV導入における重要ポイントを示す。

AGV導入における重要ポイント
1 導入目的の明確化
2 機器選定
3 運用環境の整備
4 安全対策
5 既存システムとの連携

図5 物流現場向けのAGV導入における重要ポイント

  • 出典:各種資料より株式会社NX総合研究所作成

同図を用いて、物流現場向けのAGV導入における重要ポイントを5つ紹介する。

第一に、導入目的の明確化である。AGV導入目的として、省人化、作業効率化、安全性の向上、24時間対応、輸送品質の向上、輸送履歴の管理、物流コスト削減等が求められる。

第二に、機器選定である。国内外のベンダーから多様なAGVが提供されているため、誘導方法、ルート変更の容易性、障害物回避などの安全性などを十分に評価する必要がある。海外製の安価なAGVも見られる一方で、高品質で手厚い保守管理が期待できる国内製も根強い選択肢である。

第三に、運用環境の整備である。AGVを導入する作業工程の絞り込み、運搬ルールの設定、運搬工程の発着地におけるバッファーの確保、AGV専用通路の確保、倉庫路面の整備などが挙げられる。

第四に、安全対策である。障害物検知センター、緊急停止ボタン、動線分離、立入禁止エリアの設定、定期点検、保守計画の立案とその進捗管理が求められる。

第五に、既存システムとの連携であり、WMS(倉庫管理システム)等と連携して、現場の作業繁閑や入出荷物流量に応じた柔軟な運用設計をおこなうことが望ましい。

おわりに

本稿では、物流DXの定義、物流事業者に馴染みやすいデジタル化および機械化に関する2つの導入事例および導入ポイントについて、紹介した。

我が国の国家戦略として、物流DXによる効率化の実現が喫緊の課題である。国土交通省の物流DXに関する施策に基づいて、既存のオペレーション改善・働き方改革を進め、物流システムの規格化等を通じて、物流産業におけるビジネスモデルの革新が実現することを期待する。

KEYWORD 配送センターとは

多種多様の品物を供給者から荷受けし、積替え、仕分け、保管、流通加工、情報処理などにより、需要者の注文する品物を揃えて、迅速かつ確実に配送する施設をいう。あらかじめ定められた地域内への配送機能を主な役割とし、仕分け・配送の効率化を図ることを目的とする。

  • (注)出典:ロジスティクス用語辞典 日通総合研究所【編】
  • (注1)2025年11月時点の情報をもとに作成しております。
  • (注2)トップ画像は生成AIを用いて作成しております。

コンテンツ提供:NX総合研究所

NX総合研究所は、60年以上の実績を持つ物流に特化した「ロジスティクスのプロ」です。「ひと」「モノ」「環境」という幅広い視点から、国内だけでなくグローバルで、物流コストの削減、作業の効率化、品質向上という身近なテーマに加え、サプライチェーンの全体最適化や物流会社の経営支援までお手伝いしています。

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