人事・労務系のリスク
賠償責任保険とは?
具体的な補償内容や必要性を解説
事業立ち上げにあたっては、保険への加入を検討する必要があります。このとき、自社で発生する可能性があるリスクとその備えについて目を向けることになるでしょう。
事業を営むうえでは、取引先やお客さまを巻き込んださまざまなリスクが想定されます。法人・個人事業主向け賠償責任保険とは、事業活動における賠償責任のリスクに備えて加入する保険です。
本記事では、賠償責任保険とは何か、またその必要性や補償内容について詳しく説明します。事業を立ち上げたばかりで、賠償責任保険への加入を検討している方は参考にしてみてください。
賠償責任保険とは?
賠償責任保険とその補償内容へ触れる前に、まずは賠償責任とは何かを把握しておきましょう。
賠償責任とは
権利侵害や債務不履行によって他人へ損害を与えた場合、加害者は被害者に対してその損害を補償しなければならない責任を負い、これを賠償責任といいます。
賠償責任が問われるケース
民法などの法律に基づいて賠償責任が問われるケースは主に以下の3つです。
- 不法行為に基づく賠償責任
- 債務不履行に基づく賠償責任
- 製造物責任に基づく賠償責任
それぞれの詳細を見ていきましょう。
不法行為に基づく賠償責任
不法行為とは、故意または過失によって、他人の権利や利益を侵害して迷惑をかけることです。不法行為がなされた場合、それによって生じた損害については加害者が責任を負わなければならず、これを不法行為責任といいます。
例えば、不法行為に基づく賠償責任が発生するのは以下のようなケースです。
- 【事故事例】
-
- 道路工事中に石がはねて通行人にケガをさせた。
- 料理を提供する際にこぼしてしまい、お客さまの衣服を汚してしまった。
債務不履行に基づく賠償責任
債務不履行とは、契約によって約束した義務を果たさず、相手に不利益を与えてしまうことです。例えば、A社がB社に対して何らかの義務を負っており、それを履行せずもしくは不完全であった場合にB社が損害を被ったとき、A社はB社から損害賠償請求をされる可能性があります。
以下のようなケースが、債務不履行による賠償責任が発生する事例です。
- 【事故事例】
-
- 発注を受け作成した部品が納品後に不良品であることが判明し、納品先企業の製造ラインを止めてしまった。
製造物責任に基づく賠償責任
製造物責任法(PL法)は、製造物の欠陥により生命や身体または財産に損害を被ったとき、被害者が製造業者などに損害賠償を請求できると規定した法律です。
事故事例には以下のようなものが挙げられます。
- 【事故事例】
-
- 製造した化粧品が原因で購入者の肌に炎症が起きた。
- 製造した家電製品に欠陥があったため製品が発火し、購入者の家財が焼損した。
事業者(法人や個人事業主)で賠償責任保険が必要な理由
法人や個人事業主など事業者向けの賠償責任保険は、企業などが他人の身体や財物に関係する事故を起こして法律上の損害賠償責任を負う必要があるとき、それを負担することで被る損害に対して保険金をお支払いするものです。
この保険は、事故自体の損害だけでなく、示談による費用なども補償します。また、「法律上の損害賠償責任」は、必ずしも裁判上の確定判決を要するものではありません。
事業活動を継続するうえでは、さまざまなトラブルが想定されます。リスクを軽減するための備えとして、事業者向け賠償責任保険への加入が必要といえるでしょう。
賠償責任保険の補償内容
賠償責任保険は、どのような事故が起こったときに補償されるのでしょうか。損害の種類ごとの補償内容を解説します。ただし、保険会社や保険商品によって損害の種類や補償内容は異なりますので注意しましょう。
補償内容
賠償責任保険の補償内容について、主な事故の種類とその詳細は下表のとおりです。これらの事故に対して賠償責任保険から損害賠償金などを保険金として受け取ることができます。
事故の種類 | 詳細 |
---|---|
施設・ 業務遂行危険 |
施設の所有・使用・管理・業務に起因した他人の身体の障害や財物の損壊 【事例】 |
製造物・ 完成作業危険 |
製造物および完成物に起因した身体の障害や財物の損壊 【事例】 |
受託物危険 |
受託物に発生させた財物の損壊 【事例】 |
受託不動産危険 |
借用する不動産で発生した財物の損壊 【事例】 |
受託貨物危険 |
火災や盗難、輸送用具の衝突や転覆などの事故による、受託した貨物の損壊 【事例】 |
人格権侵害・ 宣伝障害 |
■人格権侵害
■宣伝障害
【事例】 |
保険金の支払い内容
賠償責任保険で支払われる保険金は、損害賠償金だけではありません。保険商品や特約によっては、損害発生や賠償に伴う以下の費用などに対しても保険金が支払われます。
- 損害防止費用
- 権利保全費用
- 初期対応費用
- 争訟対応費用
- 見舞費用
- 争訟費用
- 協力費用
- 建具等修理費用保険金
など
賠償責任による金銭的な損失は、企業にとって大きなダメージとなりうることを認識しておきましょう。
事業者向け賠償責任保険による賠償例
事業者向け賠償責任保険では、具体的にどのような内容が補償されるのでしょうか。建設業の場合と飲食業の場合を想定し、賠償例を紹介します。保険商品や特約によっては、賠償責任保険からは、損害額の全額または一部が保険金として支払われます。
【建設業の場合】
事例 | 損害額 |
---|---|
ショベルカーやコンプレッサーなどのリース機材を、使用中の作業ミスで破損させてしまった |
110万円 |
【飲食業の場合】
事例 | 損害額 |
---|---|
食中毒が発生して、被害を受けたお客さまに治療費用を支払った |
35万円 |
建設業であればリース品を損壊してしまう受託物危険、飲食業なら食中毒を起こしてしまう製造物・完成作業危険などのリスクがあります。法人や個人事業主など事業者向けの賠償責任保険に加入することで、こうした幅広いリスクに対処できるでしょう。
事業上発生しうる賠償責任に備える保険
ビジネスマスター・プラスは、企業の賠償責任に備える事業者向けのパッケージ型保険です。
以下の表では、ビジネスマスター・プラスに加入した事業者で想定される損害賠償事故事例を紹介します。自社の事業と起こりうるリスクに照らし合わせ、参考にしてみてください。
事故内容 | 想定される 保険金 支払額 (万円) |
業種名 |
---|---|---|
ビル屋上の小屋解体工事中、重機で誤って床を破損させてしまい階下に漏水が発生してしまった |
2,800 | 工事業(とび・土工・コンクリート工事・土工工事)/土木工作物(解体工事・工作物解体工事) |
フォークリフトで作業中に取引先の従業員の右足に乗り上げてケガをさせてしまった | 900 | 物流業(貨物取扱事業) |
納品した皿に突起物があり、皿を購入したお客さまがケガをしてしまった | 700 | 製造業(窯業・土石製品製造) |
- 上表は想定であり、実際の事故によって支払保険金の額は異なります。
前述の賠償例における損害額や上記の支払額からわかるように、損害賠償金は高額になるケースも珍しくありません。万が一損害賠償金を支払う事態となっても、事業を安心して継続できるよう備えておくことが大切です。
ビジネスマスター・プラスは、賠償責任の補償だけではなく事業の幅広いリスクをカバーできる保険です。また、個人事業主の方も加入可能です。事業に合わせて「役員・従業員のケガ、病気の補償」、「工事の目的物の補償」、「設備・商品等の補償」、「休業時の利益や費用の補償」など、自社のリスクに備えた補償を選べることも強みの一つです。詳細は以下のページをご覧ください。