【カナダの医療費】国民は無料!ただし留学生・旅行者は注意

留学や旅行で海外を訪れる際は、万が一に備えて医療費や保険についての情報も知っておきたいですよね。国によって採用している医療制度は異なります。「支払に高額な費用がかかってしまうのでは?」「持病があっても渡航先で十分な治療は受けられる?」など、さまざまな疑問がわくのではないでしょうか。突然の出来事に慌てないためにも、事前に訪問先の医療情報を確認しておくと安心です。
今回は、カナダの公的保険制度や加入条件、病院の仕組みなどについて、日本の医療制度と比較しながら解説していきます。

カナダの医療費は無料?健康保険制度の仕組み

医療機関にかかる際、保険に加入しているかどうかで必要な金額は大きく異なります。カナダの健康保険にはどのような特徴があるのでしょうか。日本の制度と比較していきます。

カナダの医療制度(メディケア)は、国民皆保険制度で無料

カナダも日本も国の医療保障に国民皆保険制度を採用しています。これは国民であれば誰でも公的な健康保険に加入できる仕組みのことで、日本では1961年に導入されました。同じ国民皆保険制度でも、カナダではメディケアと呼ばれる独自の保障システムを設けています。

以下のとおり、日本とは負担する医療費の割合や保険の適用範囲などに大きな違いがあります。

患者が支払う医療費 適用外の治療
日本 治療にかかった費用の3割
(患者の年齢によっては1〜2割)
美容を目的とした手術、妊娠・出産など
カナダ なし 歯科治療、リハビリなど

日本の場合、健康保険に加入している患者が支払わなければならない医療費は全体の3割程度で、残りは被保険者や事業主が支払った保険料でまかなわれています。国が一律で制度を管理しているため、国内であればどの地域の病院を受診しても同じ水準の治療が受けられます。
州政府に大きな権限が与えられているカナダでは、場所によって受けられるサービスの内容に若干の違いがあります。

ただ、医療費は基本的に無料で、日本では保険適用外とされる妊娠・出産についても補償されています。金銭面で大きなメリットを感じるメディケアですが、短期留学や旅行などでカナダに一時滞在をしている人は加入できないことがほとんどです。また、処方された薬(入院中を除く)の費用についてはメディケアの加入者であっても自己負担となります。

カナダで保険未加入のまま旅行や留学をすると、ケガは全額自己負担で高額に

医療保険について詳しく知らないまま海外を訪問してしまうと、万が一ケガや体調不良で病院にかかったときに、高額な医療費を請求されてしまうことがあります。カナダのメディケアは州によって加入条件が異なるので、長期滞在を予定している人は、カナダ政府や各州の公式サイトなどで確認しておくことが大切です。

例えば、首都オタワがあるオンタリオ州のメディケアは、対象者の条件に年間153日以上の居住などを挙げていますが、ワーキングホリデーが目的の人は加入ができません(2020年9月現在)。

反対に、一定期間の居住予定を満たしていれば同じ目的でも加入できる地域があります。大都市のバンクーバーで有名なブリティッシュコロンビア州では、6ヶ月以上現地で過ごす予定であれば、ワーキンングホリデーで訪れた人も加入の対象になります。ただし、保険の申請ができたとしても、実際に保険証が使えるようになるまでは3ヶ月の待機期間を要します。待っている間に医療機関を受診した場合、医療費は全額個人で負担する可能性もあります。

また、条件が合わずメディケアに加入できなかったときにも、治療の費用は全て自己負担です。旅行や数か月の留学、ワーキングホリデーなどで短期間のみカナダに滞在する人は、メディケアの対象外になることが多いので注意が必要です。

カナダの医療事情。緊急外来でも待ち時間が長い

日本とカナダの医療を比べてみると、国の健康保険制度だけではなく、病院の種類や診療の仕組みについても違いがあることが分かります。簡単に受診ができなかったり、病院での待ち時間が長かったりと、カナダの医療機関ならではの問題もあるようです。

日本では、体調を崩したときには最初に総合病院を受診する人も多いですが、カナダでは一般的に家庭医(ファミリードクター)かウォークインクリニックのどちらかで相談をします。それぞれの役割や特徴は以下のとおりです。

  • 家庭医

    家庭医(以下、ファミリードクター)とは、地域に根ざした開業医のことです。幅広い医療の知識を持っているので、患者のさまざまな不調に対応してくれます。特定の治療が必要だと判断した場合は、専門医に患者を紹介する役割も持ちます。日本では、予約をしなくても皮膚科医や産婦人科医といった専門の医師に診てもらえるケースが多いですが、カナダの場合はファミリードクターの紹介状がなければ受診ができません。

    なお、ファミリードクターへの相談にも予約が必要です。予約日に診察を受けた後、必要に応じて専門医を紹介してもらう流れになるので、求める治療を受けるまでにある程度の時間がかかってしまいます。

  • ウォークインクリニック

    ウォークインクリニックは主に街中や商業施設内にあります。ウォークインクリニックは設備が簡易的で、比較的経験の浅い医師が対応していることが多いですが、診療時間が長く土日も営業しています。
    そのため、ファミリードクターから診察を受けられなかったときに訪れる人がほとんどです。

    ウォークインクリニックの診療時間外や、緊急性の高い症状の場合は、救急外来(以下、ER)を受診します。カナダの医療機関はどこも混雑していますが、ERは特に待ち時間が長い傾向です。カナダ日本大使館の情報によると、オンタリオ州にあるオタワ病院のERでは診察までに5~14時間前後かかるといわれています。ただ、症状が重い患者から優先的に診察してもらえるので、医師に重症と判断された場合はすぐに診察してもらえるでしょう。

    カナダに一時的に滞在している旅行者はERかウォークインクリニックを訪れることになります。症状によって診察の優先順位を決める制度は日本では導入されていないため、待ち時間の長さに驚く人も多いようです。
    最近では、このような不自由さを改善するために民営の医療機関を認める州もでてきています。全体の数としてはまだ少なく、医療費も自己負担となりますが、待ち時間の短縮を求める人やメディケアに加入できなかった人を中心に支持を得ています。

カナダ旅行・留学中の医療費

先に述べたとおり、旅行者や短期留学生はほとんどの州でメディケアに入れません。長い待ち時間を経てようやくERかウォークインクリニックを受診できたとしても、保険に未加入のままでは高額な治療費を請求される場合があります。

カナダ留学・旅行中の高額医療費の例

実際にカナダで過去に起こった例を用いながら、どの程度請求される可能性があるか見ていきましょう。

事例1)
バスから降りる際に貧血で意識を失い、そのまま転倒して顔を強く打ち付けてしまいました。搬送先の病院で頭蓋骨と下顎の骨折と診断され、治療のために3日間入院。手術の費用などと合わせて、合計で約383万円かかりました。

事例2)
観光先で水たまりに足を取られて転倒。大腿骨を骨折し、手術のため11日間入院しました。看護師付添いでの医療搬送費なども含めて、かかった金額は約642万円でした。

事例3)
乗っていた車がトラックと衝突してしまいました。腰を骨折したので、治療のために18日間入院。その後、救援者の付添いで日本に帰国したところ、トータルで約970万円の医療費がかかりました。

事例4)
列車内で息苦しさを感じ、救急搬送。病院で急性冠症候群と診断された後、別の医療機関までチャーター機に乗って再度搬送されました。手術や治療のために43日間入院し、かかった費用は合計で約3,700万円でした。

どれも驚くような金額ですが、全て特別な場所ではなく旅行先や街中で起こった事故です。これらの事例から、突然のケガや体調不良はどのような人にも起こりうることが分かります。

なお、カナダで医療費が高額になってしまう原因には、救急搬送が有料であることも挙げられます。バンクーバーで病院まで搬送された場合に必要な医療費は以下のとおりでした。

〈バンクーバーでの救急搬送〉

種類 料金
救急車の呼出し 4,065円
救急搬送 最低4万3,089円
ヘリコプターでの搬送 22万3,250円/1時間
(注)
一般社団法人日本海外ツアーオペレーター協会「都市別安全情報(バンクーバー)」参照。料金は1カナダドル=81.3円(2020年9月3日時点)で計算

救急車が入れないような場所での事故や急を要する搬送では、ヘリコプターやチャーター機が使われるので、移送費がより高額になります。トータルで数百〜数千万円の医療費を請求されてしまうと、個人では簡単に払えないため、渡航前にきちんと対策を立てておきましょう。

カナダ旅行・短期留学は海外旅行保険加入がおすすめ

短期間の旅行や留学で医療費の自己負担額を抑えるためには、海外旅行保険に入ることをおすすめします。帰国後に医療費の還付が受けられる「海外療養費制度」もありますが、既に海外の医療機関で全額を払い終えていることが条件になるので、高額の費用では難しいでしょう。

海外旅行保険では医療費の補償はもちろん、病院の予約や医療機関との通訳も担ってくれます。また、加入者の代わりに保険会社が医療機関へ治療費を払う、キャッシュレスサービスも用意されています。その場で支払いをしなくて済むため、多くの現金を持ち歩く必要がなく便利です。渡航先によっては対応できない場合もあるので、事前に公式サイトなどで確認をしておくと安心です。

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(*)
アジア旅行(個人・保険料抑えたいプラン・4日間)において、店頭販売商品(海外旅行総合保険)料率での計算と比較した場合

まとめ

カナダではメディケアと呼ばれる独自の健康保険システムを設けており、患者が負担する医療費は無料です。日本の健康保険では負担額が3割のため、費用面で大きなメリットを感じるメディケアですが、基本的に海外からの一時滞在者は入ることができません。

医療機関の仕組みにも日本と大きな違いがあります。受診には予約や紹介状が必ず必要で、救急外来では症状の重さによって診察の順番が決まります。治療までにかかる期間や待ち時間が長くなりがちなため、問題視する声も上がっているようです。

旅行や短期留学でカナダを訪れた場合、保険に未加入のままでは万が一病院にかかったときに高額な医療費が必要なので、渡航前に海外旅行保険に入っておくと安心です。

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