【イギリスの医療費】医療費制度と支払い事例

Point
  • イギリスにはプライベート医療サービスと、公的な医療保険サービスであるNHS(National Health Service)がある
  • 6ヶ月以内の滞在の場合にはプライベート医療サービスを受けることになる
  • プライベート医療サービスを提供する病院は待ち時間が少ない
  • 日本語が通じるところが多く、受診がしやすい
  • 自費診療となるため医療費が高額
  • 盲腸で入院した場合でUS$4026.65(約43万円)がかかった事例もある
  • 日本を出発前に海外旅行保険に入っておけば、プライベート医療サービスも安心して受けることができる

イギリスはイングランド、ウエールズ、スコットランド、北アイルランドからなり、正式名称はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国です。ヨーロッパ大陸の北西にあり、首都はロンドンです。音楽、ファッション、フットボール、演劇、文学などを通じ、日本人にとっても親しみやすい国となっています。

そんなイギリスへの旅行でも、やはり心配なのが病気やケガです。万一、体の不調に見舞われたらどうすればよいのでしょうか。今回、イギリスの医療制度や医療費の支払い事例を紹介します。

なお、掲載している情報は2021年4月時点のものです。

イギリスの医療費事情

イギリスの医療機関の水準は高く、万が一のときにも安心だとされています。そのイギリスの医療サービスには、自由診療のプライベート医療サービスと、国民保険サービスのNHS(National Health Service/北アイルランドでの名称はHealth and Social Care)があります。それぞれの特徴をまずは紹介していきます。

プライベート医療サービスの医療費は高額

多くの旅行者が利用するのは、私立病院や民間医療機関で提供しているプライベート医療サービスです。プライベート医療サービスには以下のようなメリットがあります。

  • 待ち時間が少ない
  • ⾼度な技術と知⾒を持った医師の診察を受けられる可能性が⾼い
  • 旅行者でも診察してもらえる
  • 日本語が通じる病院もある
  • 自分で病院・医療機関を選べる

NHSの公的医療機関は予約がとりにくく、ときには数か月待たされることがありますが、プライベート医療サービスはすぐに受診することが可能です。また、日本語ができるスタッフがいる病院が多いのもうれしいところです。海外で病気やケガをしたときはとても心細いものですが、日本語OKの病院であれば余計な心配をせずに、治療に専念ができます。

インターネットでホームページを開設している日系の病院もありますので、日本を発つ前にチェックしておくと、いざというときに慌てずにすみます。

ただし、プライベート医療サービスは自由診療のため、医療費が高額です。そこで、あらかじめ海外旅行保険に入っておくことをおすすめします。ヨーロッパ旅行は旅行費自体が決して安いものではないので、さらに医療費で大きな負担を抱えることがないよう、しっかり準備しておきたいところです。

イギリスの国民保健サービス(NHS)

一方、多くのイギリス国民は国民保険サービスのNHSを利用して受診します。NHSで受診するにはまずはGP(General Practitioner)と呼ばれるかかりつけ医の診断を受け、必要に応じて専門の病院を紹介してもらうという手順を踏みます。このNHSに加入するのにはさまざまな条件があり、一般的な旅行者は利用することはできません。

唯一、旅行者がNHSを利用する可能性があるのが救急のときです。プライベート医療サービスでは多くの場合、救急は受け付けておらず、旅行者もNHSを利用することになります。

医療費が無料の理由は?NHSのメリット・デメリット

NHSの特徴的な点は、受診が原則無料だということです(処方薬、眼鏡、歯科治療、視力検査などを除く)。NHSは加入者からの保険料と一般財源などで賄われているため、無料での受診が可能となっています。

ただし、上述したようにNHSでの受診はかなりの待ち時間を要するため、金銭的に余裕がある場合にはイギリス国民でもプライベート医療サービスを受ける人もいます。

イギリスで外国人が病院にかかるには

イギリスでの滞在中にケガや病気をした場合には上記のような医療システムの中で医療を受けることになります。では、具体的にどうしたらよいのでしょうか。

旅行中に病気やケガをしたときは

「急にお腹が痛くなった」「荷物を運んでいるときに手をひねってしまって腫れが引かない」などのトラブルが起きたら、以下のような手順を踏んで病院を利用します。日本語が通じるなど、安心の病院を探すことからスタートしましょう。

海外旅行保険のサービスを利用して受診する場合には、「キャッシュレス治療サービス」を利用するのが便利です。自分で医療費を立て替えることなく、保険会社が直接病院に払ってくれるので、手持ちの現金やクレジットカードの上限を心配する必要がありません。

通常のプライベート医療サービスのかかりかたについて

日本語の通じる病院(日系病院)を探してアポイントをとる
  ↓
診療を受ける
  ↓
現金またはクレジットカードで医療費の精算をする

海外旅行保険やクレジットカード付帯の保険がある場合

保険会社に連絡
  ↓
提携病院を紹介してもらう(保険会社から病院へ予約手配してくれる場合もある)
  ↓
キャッシュレス治療を希望する場合は、保険会社指定の保険金請求書か、病院備え付けの保険金請求書に必要事項を記入(自身で医療費を立て替える場合には診療後に診断書、医療費の領収書、薬代の領収書を受け取っておく)
  ↓
診療を受ける

救急医療が必要な場合

NHSの救急科に行くか、救急車を要請する。イギリスの救急車の電話番号は「999」。999は警察の要請でも利用するため、救急車が必要な場合は「Ambulance Please」と伝える
  ↓
診療を受ける

ちなみに、イギリスの救急車は2020年8月時点では利用が無料となっています。また、NHS未加入者であっても、救急の場合には医療費は無料となっています。

長期滞在する場合はNHSに加入できる

留学生やワーキングホリデー、駐在員の場合、高額のプライベート医療サービスではなく、NHSのサービスを利用したいとなるでしょう。外国人でも下記のような条件を満たせばNHSへの加入が可能です。

  • 6ヶ月以上合法的に英国に滞在できるビザ(査証)を持っている
  • 永住ビザを持っている
  • 合法的に1年以上滞在している

など

ビザを取得する時点で、NHSの保険料を徴収されます。加入条件を満たしているかの判断は、診療所や病院が行います。

イギリスの保険金お支払い事例

今回はイギリスの医療制度にスポットをあてましたが、他にも盗難にあってしまったり、物損事故などを起こしてしまったときにも金銭的に大きな負担となります。その備えとして必要なのが海外旅行保険ですが、イギリスで実際に支払われた例を紹介します。

病気の事例

事例1)
20代の男性がリヴァプールでの滞在中に突然腹痛に襲われました。病院に行ったところ盲腸のため手術が必要と診断され、3日間の入院となりました。総額43万円をお支払いしました。

事例2)
40代の女性がエジンバラ滞在中に発熱、のどの痛みなどの症状がありました。病院に行ったところ風邪と診断され、薬を処方されました。総額は6万4000円でした。

事例3)
50代の女性がロンドンでの観光中に転倒してしまいました。最初はさほど重症とは思っていませんでしたが胸を強打し、次第に顔色も悪くなったことから病院へ行ったところ、胸腔内に血が溜まっていることが判明し、手術を受けることになりました。手術代と入院費、家族の救援費がかかりましたが、総額62万円をお支払いいたしました。

風邪でも高額になりますので、やはり備えは必要でしょう。急な入院生活で必要になった身の回り品についても、限度額があるものの、海外旅行保険でカバーされます。

損害・賠償責任の事例

事例1)
ほんの一瞬の油断から、大切な荷物を盗まれてしまうこともあります。50代の男性がロンドンでデジタルカメラなどが入っていた手荷物やトランクをまとめて盗まれてしまいました。保険金としてお支払いしたのは30万円でした。

事例2)
30代の女性がバスタブにお湯を張ろうとしたところ、うっかりうたた寝をしてしまい部屋が水浸しになってしまいました。ホテルから損害賠償を請求され、10万円を保険からお支払いしました。

他にも、うっかり転んだ際に他人を巻き込んでケガをさせてしまったり、ショッピング中に高級な商品を破損してしまったりという事例もあります。また、注意したいのが上記にもあるようなバスタブに関するトラブルです。ヨーロッパの浴室は日本とは異なり使い勝手が悪いものが多く、バスタブから湯が溢れると階下にまで漏れてしまうこともあります。周囲の部屋までもが使えなくなると高額の賠償金を請求されるので注意が必要です。

海外旅行保険は病気やケガ、損害などもしもの時の備えになる

以上のことを鑑みても、やはり海外旅行保険への加入は大切です。病気・ケガについては日本の保険制度に基づいた海外療養費制度などもありますが、全額カバーされるわけではありません。
しっかりとしたカバーがあり、さまざまな安心のサービスが受けられることから、厚生労働省検疫所でも海外旅行保険の加入をすすめています。

ちなみに、イギリスの衛生状態は悪くなく、環境が原因となる体のトラブルは少なめのようです。しかし、やはり海外旅行では疲れから体調不良を起こしてしまいがちです。また、イギリスの場合には、石灰分の多い硬水を飲んだことから、腹痛を起こすということもよくあるので注意が必要です。

一方、病気・ケガ以外のトラブルで心配なのが犯罪です。イギリスは比較的に犯罪が少なく安全だとは言われているものの、外務省の「海外安全ホームページ」によると2017年時点でロンドンの犯罪率は東京よりも高く、殺人が3倍、強盗が128倍、侵入盗が20倍となっています。スリの被害も多く報告されています。大切な荷物を紛失・破損したりすることもありますが、海外旅行保険であればそのような場合でもきちんと保険金が支払われます。

損害保険ジャパンの海外旅行保険「新・海外旅行保険【off!(オフ)】」では、24時間、LINEで事故の連絡や保険金請求、病院手配などができるサービスを実施しています。いつでも相談ができるので、急な体調不良のときにも安心です。インターネットでご契約いただくと店頭販売時よりも、保険料が最大55%割引になります。

まとめ

イギリスの医療にはプライベート医療サービスと、NHSと呼ばれる公的な医療サービスがあります。プライベート医療サービスの病院は待ち時間が少なく、日本語で受診ができることが多くあるなど、旅行者にとってはとても便利ですが医療費は高額です。一方、NHSの医療機関を受診した場合には医療費が無料ですが待ち時間が長くて不便な上、短期の旅行者は救急以外では利用ができません。
高額なプライベート医療サービスを安心して受けるためにも、海外旅行保険に入っておくのがおすすめです。イギリスは比較的に安全な国だとされていますが、それでも旅行中には思わぬアクシデントがあります。しっかり備えておきましょう。

Back to top