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リスクファイナンスの最適配分を支援する
損保ジャパンのTCoR分析サポート

リスクファイナンスの最適配分を支援する損保ジャパンのTCoR分析サポート

気候変動による自然災害の激甚化、地政学リスクの高まり、サイバー攻撃など、新たなリスクが台頭しています。企業を取り巻くリスク環境が複雑化するなか、リスクマネジメントの高度化は、企業経営にとって喫緊の課題といえるでしょう。あらゆるリスクを移転する「保険頼み」のリスクファイナンスから脱却し、許容可能なリスクは積極的に保有していく、そのような経済合理性の高いリスクファイナンス戦略が求められています。かといって、必要以上にリスクを保有し、大切な資本を危険に晒していないか、慎重に見極めなければなりません。

本記事では、自社にとって最適なリスクの「移転」と「保有」のバランスを、定量的に導き出すための評価メソッド「TCoR」について、具体的な方法や導入メリットをご紹介します。SOMPOグループでは、この「TCoR」を用いたリスクファイナンスの最適化について、専門的な知見に基づきご提案・サポートいたします。

企業が負担している真のリスクコストとは?

はじめに、企業がリスクに対応するために、リスクファイナンスの観点でどのようなコストが生じているのか、考えてみましょう。P/L上の勘定科目として表れる「支払保険料」以外にも、さまざまなコストを負担しています。

リスクの移転コスト(保険)
支払保険料がコストとなります。また保険金請求手続きなどの事務コストも発生します。

リスクの保有コスト(自家保険/無保険)
事故・災害が起きたときの損害額すべてを、コストとして自社で負担します。
- 負担額は、事故シナリオに応じて想定される損害額と発生確率の積和である損害期待値により予測します。
- 予測を上回る大きな損害にそなえて、リスクチャージ(リスクに応じた資本の割り当て等にかかる資本コスト)が求められます。

TCoRは、こうしたリスクの「移転」「保有」にかかる、あらゆるコストの総和を可視化します。

リスクマネジメント高度化の要「TCoR」とは?

リスクコストの指標としての「TCoR」

総リスクコストの算出のために用いられている代表的な指標として「TCoR(Total Cost of Risk)」があります。本稿ではTCoRを、移転コストである「支払保険料」と、保有リスクに対して想定される「損害額期待値」の和として定義しています。一般的には、事故対応コストなども含めたより広範なコストを指す場合もありますが、本稿ではこの定義に基づき解説します。

TCoRを見ることで、多くのリスク管理担当者が一度は感じたことのある「免責額を上げれば保険料は下がるが、本当に良いのか?」という疑問にも、明確な答えを見出すことができます。
免責額を上げていくと、「支払保険料」が下がりますが、同時に保有コストである「損害額期待値」が上がります。両者の合計であるTCoRは、理論上は保有を増やすほど低減するため、最適額は、企業の財務状況が許す「リスク許容額」の範囲内で判断する必要があります。

TCoRで見る「保有」と「移転」の最適バランス

TCoRで見る「保有」と「移転」の最適バランス

このようにTCoRを用いることで、自社がリスクをどこまで保有すべきか(免責額をいくらに設定すべきか)、客観的に判断できるようになります。

ただしTCoRだけでは、リスクファイナンスの最適解を導くためには不十分といえます。TCoRには、「超低頻度・超高損害」にかかるコストを過小評価し、最適な保有が過大となる特性があるからです。

「TCoR」+「リスクチャージ」で真の最適解を導き出す

そうしたTCoRの特性を踏まえて、「リスクチャージ」という概念も含めてリスクコストを最適化することが考えられます。
リスクチャージは、「期待値を超える万が一の大規模損害」に備えるために、企業が実質的に負担している「資本コスト」を数値化するものです。具体的には、リスクに応じた資本の割り当てや、万が一の際の増資などの新たな資本調達コストに加えて、リスクをカバーするために必要な自己資本を割り当てることにより、他事業でこの自己資本を利用できなくなることの機会コストも含まれます。リスクチャージは、言い換えれば、大規模損害に備えるためのコストです。

TCoRに、このリスクチャージを加算した値こそが、企業が負担する真の総リスクコストです。そして「TCoR+リスクチャージ」の値が最小となるポイントを明らかにすることで、保有と移転の最適配分が可視化できます。

資本コストを考慮したリスクファイナンスの最適化

資本コストを考慮したリスクファイナンスの最適化

損保ジャパンの「TCoR分析サポート」

損保ジャパンは「TCoR+リスクチャージ」により、リスクファイナンスの最適化をサポートするサービス「TCoR分析サポート」を提供しています。その実践プロセスをご紹介します。大きく4つのSTEPで進めていきます。

STEP1 リスクの特定と評価
まず、お客さまの事業活動に潜在するリスクを網羅的に洗い出します。次に、洗い出したリスクに対し「発生頻度」と「損害規模」の二軸で定性的な評価(アセスメント)を行い、対応の優先順位を決定します。リスクを可視化して優先順位を付けるこのプロセスは、リスクマネジメントの根幹であり、分析の土台となる重要なSTEPです。
「TCoR分析サポート」では、このアセスメント結果に基づき、数あるリスクの中から、保険などで財務的な手当てが可能な「リスクファイナンスの対象とするリスク」を特定。焦点を絞り込んで分析を進めていきます。

STEP2 リスクの定量化と許容額の算出
STEP1で特定された主要リスクについて、各種リスク理論に基づき数値シミュレーションを行い、リスクを定量的に評価します。リスクが顕在化した場合に、どのくらい損害が発生するのかPML評価(予想最大損害額評価)などの分析を通じて定量化。損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)に与える財務インパクトを算出し、各事業への影響度や経営として許容できる範囲かを確認します。

※PML (Probable Maximum Loss)評価:特定のリスクによって発生する可能性のある最大損失額であり、合理的なシナリオやモデルを用いて算出します。

STEP3 TCoR+リスクチャージの算出
STEP1,2で得られた基礎データをもとに「TCoR+リスクチャージ」を算出。「TCoR+リスクチャージ」が最小となる最適な保険条件(保有と移転のバランス)を特定します。

STEP4 最適化プラン(保険設計)の立案
お客さまの経営戦略やリスク許容度も踏まえ、最も合理的で効率的な最適化プラン(保険設計)を立案します。

損保ジャパンはお客さまの「TCoR+リスクチャージ」の分析を、最も身近なパートナーとして全面的にサポートし、最適なリスクファイナンス戦略の構築をお手伝いいたします。

損保ジャパンの「TCoR分析サポート」

仮想ケーススタディ 製造業A社の場合

「TCoR分析サポート」により、どのようなコスト最適化が実現するのか、仮想ケーススタディでご紹介します。

A社は、国内特定地域に主要工場が集中している製造業の企業です。経営陣は地震リスクを最重要リスクと認識しており、支払限度額20億円、免責額1億円の地震保険に加入していましたが、この補償で十分なのか、あるいは過剰なのか判断がつかずにいました。そこで国内工場の地震(財物損害及び事業中断)を対象に「TCoR分析サポート」を実施しました。

分析
まず現行の保険加入条件で「TCoR+リスクチャージ」を算出。すると、総リスクコスト年間68.7億円という驚くべき数値が弾き出されました。支払限度額が低すぎるために、限度額を超えるような巨大地震が起きた場合に備える資本コストが非常に大きく、結果「リスクチャージ」が60.1億円にも膨れ上がっていたのです。

現行契約におけるリスクコストの内訳

現行契約におけるリスクコストの内訳

支払限度額の引き上げが必須であることは間違いなさそうです。いっぽう免責金額も、A社の財務力を考えれば引き上げ余地があると考えます。そこで、支払限度額・免責額とも引き上げるケースなど、複数のパターンでシミュレーションを実施しました。

リスクコスト最適化に向けたシミュレーション

リスクコスト最適化に向けたシミュレーション

保険条件の変更に伴うリスクコストの算出結果(億円)

保険条件の変更に伴うリスクコストの算出結果(億円)

分析結果と提案
最適化プランとして、免責額を10億円に引き上げつつ、支払限度額を100億円へと大幅に引き上げるプランを提案しました。このプランでは、支払保険料は増加します。しかし、それを遥かに上回る規模でリスクチャージが減少するため、総リスクコスト(TCoR+リスクチャージ)は68.7億円から63.4億円へと、大幅な削減を達成できます。
このプランに変更することで、震度7の大規模地震が発生した場合の純利益への影響を18億円、資産への影響を45億円軽減できることも、併せて試算し提示。A社は、リスクコストを保険料という「単年度のコスト」ではなく、資本戦略の視点で捉え直すことの重要性を認識し、保険プログラムの刷新を決断しました。

レジリエントな経営基盤を築く、攻めのリスク戦略

このようにリスクマネジメントの高度化を実現する「TCoR分析サポート」。実践することで企業経営に4つの大きなメリットをもたらします。

❶リスクコストの最適化
自社にとって最適な保険契約条件を把握。リスクの「保有」と「移転」を最適化することで、真の総リスクコストを最小化します。

❷財務インパクトの可視化
リスクが顕在化した際のP/L、B/Sへの具体的な影響を、定量的に把握できます。

❸経営陣・ステークホルダーへの説明責任の強化
「なぜこの保険条件が自社にとって最適なのか」を、客観的なデータを用いて説得力ある説明を行えます。

❹企業価値向上に対するリスク管理部門の貢献可視化
部門の取り組み成果を「リスクコストを〇〇億円削減」といった具体的な金額で示すことができ、社内におけるリスク管理部門の価値向上につながります。

「TCoR分析サポート」は、単なるコスト削減のためのツールではありません。むしろ、資本効率を高めて企業価値を最大化するための、重要な意思決定を支援するものです。
損保ジャパンは「TCoR分析サポート」を通じて、最適なリスクファイナンス戦略の立案を支援し、強靭でレジリエントな経営基盤を実現することで、企業の持続的成長に貢献します。
「保険料を下げる」から「資本効率を最適化する」へ。その一歩を、私たちとともに今こそ踏み出しませんか。

レジリエントな経営基盤を築く、攻めのリスク戦略
  • (注1)掲載日:2025年12月1日時点の情報です。
  • (注2)このご案内は概要を説明したものです。詳しい内容につきましては、取扱代理店または損保ジャパンまでお問い合わせください。

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