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共同海損(General Average)とは

共同海損とは

共同海損は、古くは紀元前の昔から行われてきた「海の法律」とも呼ぶことのできる制度で、海上危険に際して、共同危険団体を構成する船舶、積荷、燃料、運賃等のいずれかが、関係者のすべての利益のために、犠牲に供されたり、余分の費用を支出した場合に、その犠牲や費用を安全に助けられたそれぞれの価額に応じて分担(精算)する制度です。例えば、荒天に遭遇して浸水し、そのままでは船舶も積荷も沈没全損の危機に瀕したため、船長が故意に本船を付近の浅瀬に座州させたような場合、浅瀬に任意座州したことによって、本船の船底に損傷を被ったものの、本船と貨物は沈没全損の危機を免れたとすれば、本船船底の損害(犠牲損害)を修復するための費用は、助けられた本船と貨物の価額で分担(精算)することが公平ではないでしょうか。なお、共同の安全のために、故意に行った行為、この場合では任意座州することを共同海損行為といいます。

共同海損成立要件

船舶と貨物の共同の危険を回避するために取られた処置のために生じた費用や損害が全て無条件で共同海損として認められるわけではありません。具体的にはヨ-ク・アントワ-プ規則(York-Antwerp Rules=YAR)(ダウンロードPDF形式、60KB)に詳細に規定されていますが、そのA条に共同海損が成立する要件が明記されており、この要件を満たした場合に余分に要した費用(共同海損費用=General Average Expenditure)や損害(共同海損犠牲損害=General Average Sacrifice)が共同海損として認められます。

  1. 危険が実際に存在すること
  2. 船舶と積み荷の共同の安全のためになされた処置であること
  3. 通常の行為ではなく故意になされた処置であること
  4. 合理的な処置であること
  5. 出費された費用又は犠牲にされた損害は異常なものであること

ヨ-ク・アントワ-プ規則

現在、共同海損といえばヨ-ク・アントワ-プ規則によって精算されるのが一般的です。共同海損は古くから存在していた制度であり、また各国で個別に取り決められていました。しかし、国際的な海上貿易が盛んになるにつれ、各国で異なる制度で運営されることによる不都合が顕著に現れ、国際紛争が絶えず海上貿易上支障が出てきました。そのため、関係者間で統一した規則を制定しようという動きがあらわれ、この結果、できあがったのが1877年ヨ-ク・アントワ-プ規則であり、その後繰り返し改定が行われ、最近では2016年ヨーク・アントワープ規則が採択されています。現在実務的には主として1990年修正1974年ヨ-ク・アントワ-プ規則又は1994年ヨ-ク・アントワ-プ規則によって精算されています。

なお、ヨ-ク・アントワ-プ規則は国際条約ではありませんので、予め共同海損の精算をヨ-ク・アントワ-プ規則に基づいてなされることを約束した当事者にのみ適用されます。通常、船荷証券や用船契約書などの運送契約に共同海損条項が挿入されており、現在主として1990年修正1974年ヨ-ク・アントワ-プ規則若しくは1994年ヨ-ク・アントワ-プ規則にのいずれかによって精算される旨が明記されています。また、今後は2016年ヨーク・アントワープ規則に従う旨の明記が増加すると予想されています。

一方、日本国内の内航船の場合は荷主との間で共同海損条項が挿入された運送契約書を取り交わさない(船荷証券が発行されない)ことが多く、その場合には本船が商法第684条にいう船舶に該当していれば、商法第808条から第814条の規定に準じて共同海損の精算が行われます。しかし商法では具体的な精算方法が明記されておらず、また強行規定でもないことから、実務上は関係者間の了承の下にヨ-ク・アントワ-プ規則を準用し精算されています。

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