避難港での対応

避難港での対応と代換費用

例えば座礁のケ-スを想定してください。まずは救助を手配し、付近の安全港(避難港)に曳き入れ、船舶及び積荷の共同の安全を確保します。その後、避難港において、仕向地まで航海を安全に完遂できるかどうか船底調査を行います。損傷がなければそのまま航海を継続するでしょうし、船級協会の臨時検査を受け、堪航性が保持できないほどの損傷があれば、直ちに本修繕を施工するため、造船所に向かう必要があります。しかし積荷を積載したままでは造船所に入渠することはできないため、避難港で積荷を仮揚げし、それを保管し、本船の本修繕が完工した後、本船は避難港に戻り、積荷を再積込して仕向地に向けて避難港を出港します。

これが共同海損処理の基本型であり、航海が遅延しても本船が運送契約に基づき仕向地に積荷を運ぶということを前提としています。
しかし、航海の遅延は受荷主にとって不都合なことが多く、船主殿に対して早期に船舶を出航するよう依頼された場合、代船輸送という手段が頭に浮かぶでしょう。
しかし、代船輸送には莫大な費用がかかりますし、果たして共同海損として認容されるのが心配です。ヨ-ク・アントワ-プ規則F条では、このような問題を解決し、代船輸送のような基本形の代替手段に要する費用を「代換費用」として次のように定義しています。

「共同海損に認容されるべき他の費用の代わりに支出した余分な費用は共同海損と見なし、共同海損以外の利益につき節約がなされたとしても、これを考慮することなく、支出を免れた共同海損費用の額の範囲内で共同海損に認容する」

具体的には、本船の本修繕を施工する場合には、共同海損で認められたであろう積荷の仮揚げ、保管、再積込の荷繰り費用が、代船輸送することにより支出を免れます。一方で本船が航海を継続した場合に要したであろう燃料代や港費も支出を免れることになります。したがって、(支出を免れた荷繰り費用-支出免れた港費・燃料代)等の節約された費用の範囲内で代船を手配できるのであれば、代船輸送費は全額共同海損に認められます。範囲内で代船を手配できない場合でも共同海損として認容されますが、超過額は共同海損には認められず、船主、用船者、荷主等の関係者間で誰が負担するか協議されることになります。

したがって、避難港ではこのような代換費用を念頭に置きながら、次のことを調査・検討し、共同海損精算人と対策を検討していく必要があります。

  1. 本船の損傷状況
  2. 仮修繕の要否
  3. 避難港の修繕設備
  4. 仮修繕及び本修繕に要する日数及び修繕見込額
  5. 陸揚げ貨物の数量
  6. 貨物の保管設備の有無と荷繰りに要する費用
  7. 代船の費用

共同海損サーベイの手配

当社は避難港において共同海損サ-ベイを手配します。上記のような代換費用の妥当性の判断や、犠牲損害の確認などのため、また共同海損に認められるべき費目と費用を調査し、共同海損精算人が精算するための根拠資料とするために手配した共同海損サーベイヤーにレポ-トの作成を依頼します。通常、共同海損精算人と共同海損サ-ベイヤ-は連携を取りながら、その処理にあたり、船主殿に余分な支出がないようアドバイスし、場合によっては荷繰り業者などと費用の交渉も行います。

サ-ベイヤ-は国内であれば、一般社団法人日本海事検定協会(https://www.nkkk.or.jp/)外部リンク一般財団法人新日本検定協会(https://www.shinken.or.jp)外部リンク神戸海事検定株式会社(http://www.kmsco.jp)外部リンクなどを手配します。海外であれば、共同海損精算人を通じて、現地の有能なサ-ベイヤ-を手配致します。

船貨不分離協定(Non Separation Agreement)

代船輸送をする場合には注意を要します。そもそも共同海損は船舶と貨物の共同の安全のために要した費用を認めているので、代船輸送することによって本船と貨物が一旦分離してしまえば、代船輸送以後に本来共同海損として認められるような費用が共同海損として扱われなくなってしまいます。しかし、代船輸送は荷主にとっても好都合であるのに、船主のみが費用負担することは著しく不公平です。このような不公平を避けるため積荷が代船輸送された場合でも、本船で輸送された場合と同様に共同海損となったはずの費用を分担することを目的として当事者間で協定するのが船貨不分離協定(Non Separation Agreement)(ダウンロードPDF/7KB)です

1994年及び2004年ヨ-ク・アントワ-プ規則G条ではこの船貨不分離がルール化されており、別途当事者間でその都度協定書(Non Separation Agreement)を締結する必要がなくなりました。

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